長嶺さん、大丈夫ですか?
「長嶺さん。 このスマートフォン、私用ですよね? ずっと鳴り続けてて本当に騒がしかったです」

 普通、私のようなまだなんの実績もない新人が五つ歳上の中堅社員、それも営業部一番のエースに対してこんな生意気な口を利くのは非常識と思われるだろう。

 だがそれでいい。


「あ、ほんと? ごめんねー」


 この無駄に可愛いふにゃ笑顔から見てもわかるとおり、この上司には私の嫌味がまるで通用しないのだ。

 長嶺さんは荷物を置いてPCを立ち上げながら、先ほど騒がしく鳴いていたスマートフォンを手にしてトトトッと軽やかに操作する。


「……長嶺さん」

「んー?」

「オフィスで私用の連絡はダメですよ」

「あはは」


 あははて。

 フフ、いてこましたろか?(ニコニコ)

< 4 / 284 >

この作品をシェア

pagetop