長嶺さん、大丈夫ですか?
 そして亜由子は、顔を押さえてさめざめと泣き始める。
 お決まりの展開にため息を漏らしつつ、ティッシュを数枚渡してあげる。

「うぅっ、やっぱり、私たちのせいで恋愛に臆病になってるのよね」

「……そんなんじゃないから。 朝からこんな話やめよ。 てかもうそろそろ行かないとじゃない?」

「キャッ、ほんと!」

 あっという間に泣くのをやめて少女漫画のヒロインみたいにキャーキャー準備を始める母をよそに、お皿を洗いながら物思いに更ける。


――私たちのせいで恋愛に臆病になってるのよね


 ……少なからず、あるかもしれない。

 両親の離婚は、わたしの人生観……いや、人生そのものを変える出来事だったから。


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