長嶺さん、大丈夫ですか?
「……長嶺さん」

「んー?」

「長嶺さんのお友達に、アユコという48歳の女性はいませんよね?」

「いないね」

「そうですか」


 心の底から安堵した。

 そして長嶺さんがいつも通り安定してクズで安心する反面、なんか冷めた。

 先週のあれはなんだったのだろう。


「どうしたの花樫さん。 チベットスナギツネみたいな可愛い顔して」

「それはたして可愛いですかね」

「可愛いじゃん」

 長嶺さんはさっき小宮さんにも送った極上のイケメンスマイルを私に寄越す。

「……そうですか」

 パチンコ屋のティッシュ配りと同じくらい『可愛い』をばら撒く軽い男に、一瞬でもときめいてしまった過去の自分をなんとかして葬りたい。

 そこで定時を報せる鐘が鳴った。

「今日はもう事務処理ないし終わろうか」

「はい」

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