長嶺さん、大丈夫ですか?
「優しいお医者さんでよかったですね」

「ほんとだねー。 ……さて、この子をどうしますかね」


 長嶺さんが私の抱く猫をうりうりと撫でる。


「ですね……」

「花樫さん家は?」

「母が猫アレルギーでして……知り合いに当たってみたんですけど、なかなか今すぐ飼ってくれそうな人はいなくて……」

「俺も今んとこ全滅だわ」


 保護したいけど既に何匹か飼ってて世話しきれないという人、住んでる場所がペット不可だったり、同居人がアレルギーだったり。
 理由は様々だけど、猫をいきなり預かれる人と言うのは、この都会ではすぐには見つからないものらしい。
 かと言ってあの場所にまた戻しに行くわけにもいかない。 どうしたものか……。

 
「ミィ~」

 
 何かを察したのか、子猫が不安そうに鳴く。


「大丈夫だよ。 絶対素敵な飼い主さん見つけてあげるからね」

「ミィー」


 すりすりと頬ずりしてくる子猫が愛おしくて、いっそ彼氏にうつつをぬかしてる母なんか無視して連れて帰ってしまおうかという邪悪な考えがよぎった。


「しゃーない」


 猫がフワッと宙に浮いた。


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