長嶺さん、大丈夫ですか?
 そう言えば長嶺さん、会社から家そんなに遠くないって言ってたな。 ここから歩いて行ける距離なのかな。
 猫飼い始める時ってきっと色々準備したりで大変だよね……
 好奇心旺盛な子猫だから、イタズラいっぱいしちゃいそうだし
 ていうか長嶺さん、プライベート忙しそうなのに大丈夫なのかな?
 今日だってアユとー……


「長嶺さんっ!」


 ほぼ無意識のうちに声をあげていた。

 長嶺さんが振り返る。


「んー?」

「あのっ、手伝いに行ってもいいですか!?」

「え?」


 私は意を決して長嶺さんの元へ走る。


「この子まだ目が離せない時期ですし、何かと人手はあった方が良いですよね。 それに、えっと……なんか心配なので、手伝わせてください!」


 私の提案に、長嶺さんは目を見張ったまま黙った。


「ダメですか……?」

「……や、ダメって言うか……花樫さん、俺の家に来るってこと? 一人で?」

「はい!」

「29歳独身男の一人暮らしの家に、花樫さんが、来るの?」

「……っ」


 そこでようやく長嶺さんが言わんとしてることが分かって、自分がかなり大胆な提案をしていることに気が付いた。

 
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