長嶺さん、大丈夫ですか?


 ガチャッ。

「どーぞー」
 
 ドアを開けた長嶺さんが言って、私はハッと我に返った。

「お、おじゃま、します」

 子猫をキュッと抱きしめると、「ミャァ」と不服そうに鳴かれた。

 
 駅から歩いて5分ほど。
 ついた先は、超高級マンションではなかった。

 一般階層の住宅街にある、三階建ての鉄筋コンクリート造り、6世帯ほど住める普通のアパートマンション。

 築年数もそれなりに経っていそうだ。 アパートの向かいには老舗スーパーオクムラヤと、コインランドリーがある。
 
 階段で二階に登り、長嶺さんは何の変哲もない扉を開けて私を招き入れた。


 ……あ 長嶺さんの匂いがする。


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