長嶺さん、大丈夫ですか?
 あぁ、この顔。


「……」

 
 長嶺さんが私に対してたまにする、妙にあったかいこの顔。
 大人が子供をあやすときにするようなやつ。
 

 ……嫌いだ。

 
 私は頭にのった長嶺さんの手を両手でとって、見上げた。

 
「…………出さないんですか?」


 長嶺さんの顔から笑顔がゆっくりと消えていく。

 
「…………え?」


 普段は絶対見せない長嶺さんの色のない表情を見て、我に帰る。


「わぁ!」

 
 私は掴んでいた長嶺さんの手を放り投げた。

 
「おっ、おおおおお風呂いただきます!」


 放心する長嶺さんにシュバッと頭を下げ、タオルを抱きしめてお風呂場へとダッシュする。
 大急ぎで服を脱ぎ、浴室に入ってシャワーの温度を確認せずにハンドルを回して、冷水が頭にかかって「ひゃぁ!!」と声が出てしまいそれを慌てておさえる。


 何やってるの私! てか、

 さっき! 何しようとしたのさっき!!


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