長嶺さん、大丈夫ですか?
「花樫さん?」

「!!」

 ドア越しに長嶺さんの声が聞こえて心臓が飛び出るほどに大きく鳴った。

「大丈夫? 変な声したけど」

「大丈夫です! 大丈夫です! なんですか!?」

 自分が真っ裸でいるときに、扉一枚隔てて向こうに長嶺さんがいると思ったら、普通になんかしてられない。

「……着替えの服。 俺ので悪いけどここ置いとくから。 それと乾燥機かけたいものあったら洗濯機入れといて」

「あ、あああありがとうございますわかりました!」


 そして長嶺さんはすぐにいなくなった。

 だめだ、一旦落ち着こう……!

 体をお湯で流しながら深呼吸して、なんとか心を落ち着けていく。
 

 体を洗い終えて出ると、洗濯機の上にバスタオルと黒のスウェット上下が置かれていた。 バスタオルで体を拭き、スウェットのトップスを手に取って、身にまとう。

 すると、

 長嶺さんの匂いに抱きしめられた。

 
 ドッ


「っ、!?」
 

 ドクドクドクドク……

 心臓が爆速・爆音で鳴り出した。

 なに、これ

 やばい、やばいやばい!

 なんでこんな心臓はやくなるの、ていうか顔、熱……っ、

 長嶺さんの匂いを感じれば感じるほど、大きすぎるスウェットの暖かさに体が過剰に反応する。

 私は顔を左右にぶるぶると振った。

 かっ、考えるな! 感じるな!

 これはただのスウェット、ただの服、そうだ、鼻で息するのやめよう、口だけでしよう!
 
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