長嶺さん、大丈夫ですか?
 バチン!
 
 私は勢いよく自分の頬を平手打ちした。

「!?」

 長嶺さんが目を丸くする。

「えっ、どうしたの?」

「っ、なんでもないです!」

「いやめっちゃ痛そうだけど」

「大丈夫です!!ちょっと喝をいれたかっただけです!!」

「なんで?」
 
「そうだ!そろそろご飯ですね!」

「おん……」


 私は先ほど買ったカリカリフードをガサガサと探る。


 何をっ、何を考えてるんだ私は……!
 お風呂上がりに欲情するなんて!
 しかも長嶺さん相手に……!!


 その時、長嶺さんのスマートフォンが鳴って、長嶺さんはチャコを離してスマホを耳にあてた。


「……あ、もしもし、アユ? うん、そうなんだよー、ほんとごめん。 え? ははっ、嘘じゃないって」


 長嶺さんは私に背を向けてキッチンの方で通話を続ける。

 私は耳をダンボにして、チャコがカリカリを食べるのを眺める。


「……ん? 見たい? 俺ん家?」

 !!

< 73 / 284 >

この作品をシェア

pagetop