長嶺さん、大丈夫ですか?
 長嶺さんは眉間にしわを寄せる私に構わず、スマホを操作しながら何でもないことのように言う。


「一人に家教えるとさ、その子だけ特別扱いする形になっちゃうから他の子にも教えるでしょ? そんで一回教えたらもう呼ばなくても来ちゃった☆とか言っていつでも来れちゃうわけ。 そんでそれがたまたま別の女の子が来てる時でバッティングする。 はい、修羅場完成〜」


「…………」


「ふ。 自分ちで花樫さんのその白い目見るの新鮮だなー」


 私は眠くなって膝にきたチャコを撫でながらひとつため息をついた。


「つまり私は長嶺さんにとって圏外だからここに居れてるわけですね」


 長嶺さんは返事をする代わりにニッコリと屈託ない笑顔を私に送った。


「ていうか、みんな本命じゃなくお友達なんですよね? それなのに他の女性とバッティングするとやっぱり怒るんですか」

「うーん、やっぱり現場見ちゃうと彼女スイッチ入るっぽいねー」


 ……なるほど、経験済みなんですね。


< 75 / 284 >

この作品をシェア

pagetop