長嶺さん、大丈夫ですか?
「……結婚できないじゃないですか」

「できないだろうね」

「いいんですか?」

「いいよ。 こんなクズの血が残っちゃったら人類の損失じゃん。 ……はい、ウーバー30分後に来まーす」


 長嶺さんはスマホを置いて、水の入ったグラスに口をつけた。

 ……意外に自己肯定感低い?
 

「長嶺さんって、自信満々な人だと思ってました」
 
「ハハッ、自信かー。女の子気持ちよくする自信ならあるけど」

「……」


 ちょくちょく変態挟んでくるの、何とかならないのかな?

 げんなりした気持ちを覚ますように、私もお水を一口含んだ。

 
「……好きな人に好きになってもらえる自信はないわ」


 意外なセリフに、長嶺さんを見た。


「だから色々うまくいかない」


 困ったように笑う長嶺さんが、寂しそうに見えた。
 
 その目は、ここではないどこか遠くを見ているようだった。

 見ちゃいけないものを見た気がして、目を逸らす。


< 77 / 284 >

この作品をシェア

pagetop