長嶺さん、大丈夫ですか?
 なんてことだ。
 長嶺さんは今まで、連絡とって会う女の子は遊びの女の子だけで、本命彼女はいないと言い張っていた。
 交際中の嫉妬しちゃう彼女がいるなんて、聞いてない!
 なぜか悔しいほどに悲しいしムカつくしで、涙が出てきそうなくらいだ。


「あぁ、いないよ」


 長嶺さんがしれっと言った。


「ああん!?」

「彼女はいない。 さっきの嘘」

「……えっ」


 長嶺さんは私の方によっ、と身を乗り出して私のシートベルトをとった。

 
「っ!」

 
 あまりの近さに香った甘い香水が、私の体温を急上昇させる。

 長嶺さんはなんでもない顔でそんな私をシートベルトに閉じ込める。


「麗華ちゃんねー、可愛いんだけどちょっと粘着質っぽいから早めに牽制しとかないとって思ってたんだよなぁ。さすがに社長令嬢なんかに手出しちゃったらやばいし気をつけてたんだけどね」

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