長嶺さん、大丈夫ですか?
「そう……だったんです、か」


 な……なんだ……よかった……

 私は熱くなった頬をパタパタとあおぎながら大きく安堵の息を吐いた。


「ふ。なにホッとしてんの」


 長嶺さんが流し目で意地悪に笑った。


「べっ、別に変な意味じゃ……てか、本命の彼女さんいたらその人可哀想だなって思っただけです!」

「はいはい。 ご心配ありがとうね。 てか普通その場を取り繕う嘘ってわかるでしょ~ほんとピュアだなー理子ちゃんは」

「っ、どういう意味ですか!!」


 憤慨する私を楽しそうに笑った長嶺さんは、車を静かに発進させた。

 くぅ……相変わらずなんてムカつく上司なんだ。


「……チャコ、元気ですか」


 長嶺さんが目尻を下げてふにゃっと笑う。
 

「クソ元気」


 ムカつくけど、この笑顔は……好き。
 
 だからやっぱり、ムカつく。




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