長嶺さん、大丈夫ですか?
「じゃあまた明日。お疲れ様でーす」

 長嶺さんはヒラヒラと私に手を振って、チャコの待つ家へと帰っていった。
 長嶺さんっていつも楽しそう。
 本当にこの仕事が、お客さんと話すことが好きなんだろう。
 もし私が取引先のお客さんだったら、長嶺さんなら安心できるって思うだろうな。
 長嶺さんのこういう仕事に対する姿勢は、尊敬する。

 なんとはなしに長嶺さんの背中を見送っていると、長嶺さんがスマホを耳にあてた。

「……もしもーし。え?いまから?……黒のレース?行くわ」

 長嶺さんが方向転換して横の道に入った。
 どうやら今日は黒のレース下着につられたらしい。
 
 これがなければなぁ……。

 私は例のごとくモヤモヤ、イライラする気持ちをごまかすように帰路についた。

 


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