次の恋はすぐそこに
「前から思ってたけど、あいつのどこが好きなんだよ?」
「全部だよ、全部。私に優しくしてくれるところとか、後輩思いなところとか」
「別の女とイチャイチャしているところも?」
「それは……」
言いかけたが、その先の言葉が見つからず言い淀んでしまう。
それは、今から15分程前、駅のホームで現実を突きつけられてしまったのだ。
結斗先輩は、他校の女子生徒と手を繋いでいた。
しかも、恋人繋ぎ。
反対車線で電車を待っている2人の姿を見つけてしまっては、あまりの衝撃に呆然としているところに、たまたまその場にいた橋村くんに腕を引っ張られ、電車に乗って今に至る。
「やっぱり、諦めるしかないのかな……」
私は、結斗先輩と手を繋いだことはあっても恋人繋ぎはまだだったし、キスもまだ1回もしていない。
結斗先輩は受験生とあって3ヶ月前から塾に通い始めたから、多分その他校の女子とは塾が一緒だったのだろう。
なのに、私ってなにやってるんだろう。
受験が終わったらキスもしてくれるだろうと悠長に待っていた私がバカだった。
1年付き合っている私にはなんにもしなかったくせに、あの女子には恋人繋ぎをしているなんて……。
しかも、他の人たちがいる前で堂々と。
その中に、私がいるとも知らずに……。