次の恋はすぐそこに
「はっきり別れたほうがお前の為だと思うけどな。もうお前の泣き顔見なくて済むし」
「それ酷い!」
橋村くんの最後の言葉にぷくっと頬を膨らませ、彼を睨みつける。
彼の物言いに、涙なんか引っ込んでしまった。
なのに、橋村くんは悪びれた様子もなく私を真っ直ぐ見据える。
「だからさ、あいつのことなんて忘れて新しい恋を見つけたらどうなんだよ?」
「……新しい、恋」
「案外すぐそこにあるかもよ?」
「それってどういう意味?」
そう聞き返したものの、橋村くんは答えてくれなかった。
その代わり……。
「じゃあな、篠田(しのだ)」
ホームに電車がゆっくり停まって、橋村くんは立ち上がった。
プシュとドアが開いて、新鮮な空気が車内に流れ込む。
電車に乗り込む人たちとは入れ違いに、橋村くんは電車を降りて改札口に向かう。