【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。
次は、私が着付けされる番。

立ち上がって紗南の元へと行き、着付けを眺めながら、話をそらすように今度は私が二人に訊ねる。


「ふたりはどうなの?
新生活じゃん、色々あるんじゃないの?」


キラキラした目で聞くと、紗南は着付けの手は緩めることなく、でも楽しそうに口を開いた。


「紗南は、毎日楽しいよ!甘いもの作って食べて、って生活してる。
手で覚えることも多いから難しい事も多いけど、好きな事だから楽しいかな」


製菓学校へと進学した紗南は、本当に楽しそうな様子で話してくれた。


「彼氏は?紗南可愛いからさ」


綾羽が尋ねると、紗南は一瞬綾羽に目を移し、簡単に首を振る。


「それどころじゃないよー…。あと、シンプルに女の子だらけなの。出会いもないし、2年間なにもなく終わっちゃいそうだよー」


つまらなそうな口調とは裏腹に、表情はすっきりしていて、今は求めてもいなさそうな紗南。

やりたいことに真っ直ぐなのは、紗南らしいなと納得して、私は綾羽に目を向ける。
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