【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。
*後篇

★1

「これで…良かったんだよね…?」


満開の笑顔で、花火を見つめる菜摘。

凄く幸せそうに輝いている親友の笑顔を見つめ、私は、隠しきれない切ない思いを吐露した。

菜摘の横に、いたかもしれない、細身で美しすぎる少年の影が見え隠れする。


「綾ちゃん。」


その表情を悟ったのか、含みのある綺麗な笑顔で、私を見つめるもう一人の親友。

紗南は、すぐにいつもの天真爛漫な笑顔を浮かべた。


「良かったに決まってるよ!なっちゃんに大切な人がいたことは確かだけど、今、なっちゃんが幸せな事が一番大切だもん」


そう真っ直ぐ言い切ってくれる可愛らしい紗南の笑顔に、私は救われる思いで頷いた。


今、初恋を全力で楽しんでいる菜摘には、

彼女自身の忘れてしまった、大きな大きな初恋がある。


私達はそのほとんどを目にはしていないけれど、それでも容易に想像できてしまう菜摘の大きな初恋の思い出は、
私の心に重く深く、のしかかっていた。


「大丈夫だよ」


恭弥はそっと私の肩に手を置く。

その気遣いに小さく頷くと、晴樹も微笑ましそうに遠くで楽しそうに笑う二人を見つめた。


「あれで脈なしだと思ってんの、菜摘って案外鈍いんだな~」


花火の音で聞こえないからって、そんな下世話なことを呟く晴樹。

恭弥は、笑いながら言い返す。


「もともとだろ。菜摘のこと好きな奴なんてこれまでもいくらでもいたけど、あいつ一切気付いてなかったじゃん」

「確かに」


男子二人のあきれ顔に、私と紗南も笑って、いつもより近くに見える、大きな打ち上げ花火を楽しんだ。
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