【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。

シューっと音を立て、勢いよく火が飛び出す。

少し驚いて、体を揺らすと、菜摘は可笑しそうに笑った。


「は、花火って、初めてやったかも…」

「え？ウソ、本当に！？」


少しボーっとした様子で、目の前で鮮やかに光る火を見つめていると、菜摘は一度僕から離れていき、大量の手持ち花火を持って、再び現れた。


「初めてならいっぱいやらないと！次、これ付けよう！」


菜摘の方がやる気になっちゃってて、可笑しくて僕は笑う。

菜摘は、次々と僕に花火を渡し、満足げに笑っていた。


十分すぎると思っていた大量の花火もほとんどなくなってしまい、最後に４人で線香花火に火をつける。

動画やテレビで見たことはあったけど、思ったよりもずっとゆらゆらと安定しない花火に、僕は苦戦しながら、じーっと見つめていた。


「あっ、落ちちゃったあ！」

「あー！」

「えっ、うそ、私も…」


次々と脱落していった３人に、僕は密かに嬉しくなる。


「大翔くん、上手だね」

「やっぱ落ち着いてるから？」


葉瑠さんと、菜摘がそんな会話をする中、静かにその火は地面へと落ちていった。

儚く、消えて行ってしまうそれは、今の僕には、衝撃的なくらい感傷的で、心に重く響くものがあった。