【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。
「お兄ちゃんは?」

「隼人は講義。なんかやばそうな教授に当たったって苦しんでた」


可哀想だと言いながら、楽しそうに笑うシュンくんに、私も釣られて笑ってしまう。


「そっかー、でもごめんね今日もシュンくんに来させちゃって…」


元々は、私の病気があって過保護化した兄が病院への送迎を強制したのに、

忙しい日は、同じ大学に通うシュンくんに押し付けるから、シュンくんにはただただ申し訳ない。

そんな気持ちで謝ると、シュンくんはカラッとした笑顔で首を振った。


「あはは、隼人が怖いからね」

「ほんっとに、勝手な兄で申し訳ないです」

「嘘嘘、俺も菜摘に会えて嬉しいから」


さらっとそんなことを言ってしまうシュンくんに、私は照れた顔を隠すように、窓の外へ目を向ける。

私も、正直…、通院なんて理由でも、シュンくんに会えるのは嬉しかったから。

迷惑だと思われてなさそうで、安心して嬉しくて、少し口角は上がってしまう。


「もう…シュンくんは優しいなあ…」


その呟きに、何も返すことなく、シュンくんは小さく微笑んで運転を続けた。
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