【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。
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ずっと私達の心にある、大翔が語った思い出。
「いつか、いつか菜摘がすべてを思い出す日が来たら…。」
幸せそうに語る大翔を思い出しながら、私は、ぽつりと呟いた。
「菜摘の、あの純粋な、大好きな人に向ける笑顔は、見られなくなるかもしれない」
シュンくんのことを好きだと言い、本当に幸せそうに真っ直ぐに笑う菜摘の笑顔。
さっき見た、素敵で輝かしい笑顔が、見えなくなる、そんな可能性が怖かった。
恭弥は、苦しそうに再び空を見上げた。
きっと、恭弥も大翔を思い出して。
「忘れてるのも、無理に思い出すのも…両方、残酷だよ」
本当に小さく、苦しそう呟いた恭弥に、彼も私と同じ気持ちを抱えているのだと気付く。
あの、幸せそうな笑顔が見られなくなるのなら、思い出さない方がいい。
今を生きる菜摘を見ていたら、どうしたって、そう思ってしまうけど。
大翔の思い出を語った菜摘が、
ほとんど覚えていないのにも関わらず見せた幸せそうで愛しさの溢れ出す表情を目の当たりにしてしまったら、
「忘れたままでいてもいいなんて、言えないよ…」