血の味のする恋を知る
◇それはこの世界のお話
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わたしたちの住むこの世界はよくコインに例えられる。ひとつの世界に表と裏があり、わたしたちが住むのは表の光の世界、そして裏にあるのが魔の世界と呼ばれている。
古い神話によれば、もともとこの世界を作ったとされる双子神がどのような世界を育もうかという過程で方針の違いによって仲違いをしたので世界が割れたと言われている。
兄神は強さを重んじた弱肉強食の世界を、妹神は良心を以て慈愛の世界を作ろうとしたとか。正反対の意見がぶつかり、お互いに譲ることもなかったためにひとつの世界は表と裏に分かたれた。
しかし世界を運用していく上で必要なエネルギーとも言えるものは表の世界と裏の世界、ふたつを賄えるはずもなく、自然と自らの世界を守るためにふたつの世界の住人は対立するようになった。
対立していくうちに光の世界の者はエネルギー、マナを世界から受け取ることが出来るようになり、魔の世界の者はマナを取り込むことが出来るようになった。
どちらも似たような意味に感じるけれど、大きな違いが二つある。一つ目は自分の意思でできるかどうか。魔の世界の者は自分の意思で大気中のマナを取り込むことが出来るが、光の世界の者はあくまでも自然回復でマナを受け取る。
どちらの者にも体の中にマナを受け取る器があり、それ以上のマナを受け取ることはできない。器の大きさには個人差があり、大きければそれだけマナを溜めることができるため強大な力を振るうことが出来るが、小さければ使える力もそれに見合ったものになる。
このマナを使った普通では起こせない事象を起こすことを魔法と言い、人によって火や水を出したり、体を癒したりと様々なことができる。