血の味のする恋を知る
せっかくならと転がった首を掴み妹の方に放り投げれば悲鳴をあげて避けられた。身体はよくて頭部は触れられないなんて変なの。どちらも死体には変わらないのに。
そういえば妹とはあまり関わる機会はなかったな。兄はよくちょっかいをかけてきていたし、姉はすでに嫁いだ。祖父母は会う度に嫌悪の視線と何かしらの悪口を、父親にはよく怒鳴られたし、母親はヒステリックに叫ばれて叩かれた。
でも遠目から見えた妹の視線にはありありと悪意が浮かんでいたし、向こうはわたしのことを心から穢らわしい存在だと思っていたようなのでわたしから積極的に関わることもなかった。どうせあの家族に囲まれているなら妹がわたしに良い感情を持つわけもなかったし。
じっ、とただ観察のために妹を見ていれば顔を引き攣らせて涙を流していた妹がザッと顔を青褪めさせる。ガクガクと傍目にも震えながらも一瞬よぎった感情は怒りだろうか、憎しみだろうか。
「ふざ、ふざけないでよ…っ……あんた、なんでっ……!!」
「ふざける……?それはこっちの台詞だよね?」
散々虐げてきて都合のいい時だけ助けてだなんてそれこそふざけている。
「だって、親を殺すなんてっ」
「親……………?……あはっ、あっははははっ!!!」
一瞬あっけに取られてから込み上げるがままにお腹を抱えて笑った。この妹はなんて面白いことを言うんだろう。
親?確かに血の繋がりはあるけれどこの人達がわたしの親だったことなんてあるわけがない。それこそわたしが乳飲み子だった時ならばそんな時もあったのかもしれないけれど、物心ついた時にはもはやあの人達は家族ですらなかった。
あなただってわたしを家族扱いしたことなんてないくせに。