血の味のする恋を知る



最後は、と視線を向ければ兄と目が合った。青褪めていた顔から更に血の気が引く。笑みを浮かべながらそちらに手を向ければ弾かれたように叫び声をあげて転がるように逃げる姿に失笑が漏れる。


あぁ、なんて情けない姿なんだろう。こんな奴に、わたしは今まで虐げられてきたのか。


ヒュン、と風の音がしたと同時に足が飛び、血が噴き出した。絶叫が響き渡るが気にせずに風を使って無理やり身体をこちらに引き戻す。


虫のようにの足元に落ちる兄の腹部に思い切り足をのめり込ませるとガハッ、と血混じりの咳を吐く。内臓のどれかが潰れたかな。まぁ即死するわけじゃないし、わたしもいつもされていたことなんだから文句を言われる筋合いもないよね。



「不様ね、兄さん。…………とってもお似合い」



片腕を捥がれ、足も風の刃で切り落とされた。その姿じゃあもう虫ケラのように地を這うぐらいしかできないね。


何か言おうとしたのか口を開いたその瞬間に喉を踏みつける。勿論全力でしてしまえば首の骨を折ってしまうので手加減はしたが、これでもう声を上げることもできないだろう。


血の混じる唾液を飛び散らせ、怒りで顔をどす黒くする兄を見下ろすと優越感で心が躍る。きっと今のわたしも醜い顔をしているんだろう。やっぱり血の繋がりっていうのは変えられないね。



「わたしね、両親のことも祖父母のこともだいっ嫌い。姉さんと妹はよくわからないけどやっぱり嫌い。わたし達を恐れるだけ恐れて、なのに当然のように守ってもらおうとして理不尽にこっちを責めてくるこの国の人も嫌い」



でも何よりも誰よりも。



「わたしを壊した兄さんがこの世でいちばんだぁーい嫌い」



ううん、嫌いなんて言葉じゃ表せないぐらいに憎んでいる。憎悪している。嫌悪しているる。軽蔑している。


見えない言葉の刃で、見える暴力で、わたしの心も身体もぐちゃぐちゃに壊して穢して汚して犯して殺した兄さんが何よりも許せないし許さない。



「だから兄さん。あなたはここで終わって??」



わたしのために。わたしの心の安寧のために、兄さんは邪魔だ。



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