血の味のする恋を知る






「くそっ、なんで魔人がこんなところに…っ!!」


「おいっ、お前ら!殺せ!!あれを駆逐するんだ!!じゃないと、ぐあっ?!?」


「隊長?!うわぁぁぁっ!!?」



夜の闇の中に紛れて刃を振るう。隊服を着た人間が次々と声を上げて血を撒き散らして倒れていく。


背中を向けて逃げ出した人間も余すことなく不可視の風の刃で切り裂いた。ここで取りこぼすなんて失態は犯せない。勿論愛おしい人に捧げるために心臓を潰すなんて無駄なこともしない。


一撃で、確実に息の根を止めるために狙うのは首より上。後は動きを止めるために手足などの末端。教えられたことが自分の身に返ってくるなんて皮肉なことだよね。まぁ言ってもあなた達にはわからないだろうけれど。


全ての命を狩り終えればふわりと感じた気配に心が躍った。



「我が君!」



弾む心のままに駆け寄れば褒めるように柔らかな笑みを浮かべて頬を撫でられる。それが堪らなく嬉しくて誇らしくてむずむずして、どうしようもなく幸せだ。


まだ新しい死体から心臓を抉り出して口付ける姿は何度見ても神聖で尊い。その糧になれるものが羨ましいと思う時もあるけれど、こうして我が君の手足となって動ける今も満足している。


それにこの身が朽ち果てる前にはきっと、わたしも。


その時を夢想してうっとりする。それまでわたしはこの人についていくと心に決めた。


いつか来る終わりのその時まで、わたしはこの血の味のする恋に身を焦がす。


夜の闇を優雅に歩いていく背中を追いかけて側に寄れば、柔らかな微笑と白い手が差し出される。その手に自分のものを重ね、わたしも闇へと歩き出した。



fin


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