血の味のする恋を知る



物心つく前にはすでに両親も、兄も、姉も、祖父母も、わたしという存在を人間ではなくただの兵器としてしか見ていなかった。その後に生まれた妹達でさえも。


彼らにとってはわたしは強大なマナの器を持つ化け物であり、便利な道具、兵器、そして魔人や魔物を誘き寄せる厄介者でしかなかった。魔のものは人の持つマナを求めるので、わたしのように多くのマナを溜めることのできる人間は魔のものからしたらご馳走なのだ。


わたしたちのような存在は人から羨望や崇拝を受ける一方で、嫉妬され恐怖され、人として扱われることもなく世界のために人のためにと綺麗な言葉で誤魔化されながら当たり前のように消費されていく。


………どうしてわたしがと、何度思っただろう。普通の人が当然のように享受している日常が、わたしも欲しかった。


何気ない会話を家族としたかった。両親に頭を撫でて誉めて欲しかった、兄姉と些細な喧嘩もしたかったし、妹達と遊んだり、祖父母に抱きしめてほしかった。


そう願うことは贅沢なのだろうか。過ぎた願いなのだろうか。普通の人が貰えているものを、ただ強大なマナの器を持っているからと与えられなくてどうしようもなく寂しくて悲しかった。


どれだけ望んで願って夢見たところで、浴びせられるのは一方的な罵倒と嫌悪の視線、痛みと苦痛、蔑まれて見下されて、その温もりのひと欠片さえ感じたことなど一度だってなかった。




< 5 / 29 >

この作品をシェア

pagetop