【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
 だけど、どれも現実的じゃない。
 だったら、腹括って、医者をしよう! 逃げるのはやめて、医者の中でも、なるべく厳しいところへ入局して、自分の中の甘えをなくそうと思いました」
「それはまた……すごい発想だね。自分を追い込むというか……」

 うん。廣澤くんに同意。麗ちゃん、意外とM⁇

「私の中の選択肢は、外科、産婦人科、小児科の三択でした。でも私、勉強はそつなく出来たんですけど、壊滅的なほど手先が不器用で。外科は諦めました。
 残るは産婦人科と小児科。
 患者さんと接することを考えた時、子供って、私にはすごくハードルが高い気がして。未知のものですから。だから小児科を選んだんです」

 みんな、蕩々と語られる内容に黙って耳を傾けていたけれど、だんだんわかってきた。
 麗ちゃんの人となりが。

 実は不器用で、クソがつくくらい真面目な子だ。
 周りを見回すと、皆一様に同じ顔をして頷いている。気づいていないのは本人だけ。

「でも、小児科に入局してしばらく経ったら、やっぱりいつもの私が出てきて。淡々と仕事をこなすようになっていました。
 患者さんに元気になって欲しい、治って欲しいという気持ちはもちろんありました。大学附属病院の小児科病棟に入院する小さな患者さんは、かなり深刻な子が多いです。
 私は親身になってあげられてるのだろうか? 病気の子を持つご家族に寄り添ってあげることができているのだろうか? そう考えたら、あぁ、また同じこと繰り返してる……と思いました。
 藤田先生にも指導いただいたけど、ふざけたことばかりしてたと思います。
 でもそれが、私の中で変わってきたんです。きっかけは……藤田先生でした」
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