【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
「お前、あれ、俺が付き合いたくてOKしたと思うか?」
「え……そりゃ、あの状況でお断りしたら鬼だよね。渋々なのはわかってたよ」
「そう。さすがにあの場でお断りは俺もマズいと思った。だから後でもう一度話そうとしたんだ」
「うん。賢明だね」
「それで、昨日は予備校の日だったから帰りに話そうと思って、あっちの教室に行ったんだ」

 話は早い方がいいと思ってな、と。
 
 佐伯さんの教室へ行くと、早速、彼氏として彼女を誘いにきたのかと冷やかされた。
 佐伯さんも当然のことの様に「あら、迎えにきてくれたのね」という感じで迎え入れたと。
 
 いや、何様だ? と思ったけど、その場ではなにも言わなかった。
 
 うんうん。賢明だ。
 
 だから学校を出てすぐに切り出したと。

「俺はバスケ部と予備校でほぼ1週間のスケジュールに空きがない。会えるのは予備校へ行くまでの時間だけだ。それでは付き合うのは無理だろう? って」

 うんうん。事実だし、それなら傷つけない。
 しかし佐伯さんの返しは想定外だった。

「『あら、もちろんわかってるわよ。亮平くん、中学からずっと学年トップなんでしょう? 予備校に行くことは大事だわ。将来のためにもね。それにバスケ部でも1年なのにレギュラー候補なんでしょう? それでこそ私の彼氏にふさわしいわ。だから大丈夫よ』……だと」

 ……なんだそれ?

「ようは、俺は佐伯の彼氏っていうアクセサリーなんだな。それがよくわかった。もちろん冗談じゃねぇ。お前のプライドの為になんか付き合えるか! って言うつもりだったんだけどな……」

 言うつもりだったんだけど⁇ なんだ?
 そこで亮平が俯いて肩を震わせだした。
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