【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
「あいつ、俺が飲んでた麦茶をくれって言うんだ。いや、違う! 『あ、ちょっとちょーだい!』って言って取り上げて、そのまま飲んだんだ。あの中華食ったみたいなテッカテカの口でっ! で、なんて言ったと思う?」
「……なに?」 
「『フフフ、間接キスね』って言いやがった……」

 あー、地雷踏んだな、佐伯香織……。

「俺、吐き気してきて、そのまま麦茶受け取らず、急ぐからって言って…………逃げた」

 ……まぁ、そうなるよね。

 亮平に近い友達は、亮平の潔癖症を知っている。もちろんトラウマのことも。
 ある程度知っていてもらわないと人間関係を損ねてしまうからだ。

 打ち明けることを私が提案して、周知し、みんなわかってくれた。

 でもそんなこと知らないよね、佐伯さん。
 
 「それで? 次の日に亮平から断ったんなら振られたことにならないじゃん」
 「いや! 違うっ! まだあるんだ……」

 と、亮平が訴えてくる。
 まだあるのか……。

 「今日、昼休みに俺の教室まで来たんだ、あいつ。 ……手作りの弁当持って」

 さも怖しげに、私の肩を掴んで言う。
 えぇ! まさかの地雷パート2⁉︎
 亮平に手作り弁当はありえない。

 「もう限界だと思った。これは周りに構ってる場合じゃないって。だからその場で言ったんだよ、はっきり。『俺、手作りの弁当とかムリ。気持ち悪くて食えねーわ』って」
 
 あちゃー。それ、絶対言っちゃいけないやつだ。

 「そしたらあいつ『私のお弁当が食べられないって言うの⁉︎ 失礼だわ!』って。ぶちギレて」

 そりゃ当たり前だわ。私でも心折れるよ?
 しかもみんな聞いてる教室の中ででしょう?
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