【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
結衣子の部屋
 週明けの月曜日。児童達は短縮授業になり、今週末には1学期の終業式を迎える。

 段ボールの梱包解き。サマーキャンプ中の連絡ノートのチェック。使った薬品類の発注。仕事は山積みなのに、熱中症患者が次々と運ばれてくる。ベッドは二台しかないから、床にマットを引いて対応するしかない。
 幸い、どの子も経口イオン水を飲ませたらすぐ回復した。良かった。

 子供達が下校し、やっと落ち着いた頃、またお客さんがやって来た。

「結衣子先生、お疲れ様。アイスコーヒー飲ませてよ」

 保健室に入って来たのは5年生の担任、坂上聖(さかのうえしょう)先生だ。

「ここ、喫茶店じゃないんですけど」
「え、俺と結衣子先生の仲じゃない」
「誤解を招くような言い方はやめてくださいね」
「《結衣子の部屋》はみんなの憩いの場じゃない。校長や教頭だって、ここでコーヒー飲ませてもらってるの知ってるよ?」
「……わかりました」

 今から遅いお昼ご飯なのにー。
 結局言い負かされる。

「私、今からお昼なんです。坂上先生はもう食べました?」
「うん。三隅先生と山下先生と」

 気にせず食べてねー、と言う。

「誰も聞いてないんだし、普通に話してよ」
「……わかった。聖くん、牛乳たっぷり入れるよね?」
「うん。ありがとう」

 ここは私の母校だけど、坂上先生、こと聖くんにとっても母校。

 この学校、職員の大半は卒業生だったりする。
 ちなみに現在の校長は私の1年生の時の担任。教頭は6年生の時の担任だ。恩師が上司。一見ややこしそうと思われそうだけど、ここではごく普通のこと。
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