【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
「ぐずぐずしてるみたいだから、俺がいただく! ……って宣戦布告されたよ」

 ハハハ……って。

「聖くん、笑い事じゃないでしょう! どうするの?」
「どうしようかな……。正直さ、雅の相手、俺でいいのかなってちょっと思い始めてさ……。ずっと小さい時から一緒だったから、自分達の社会的な立場の違いとか、意識したことなかったんだ。雅は大きな会社の社長令嬢で、俺はただの教師。うちはごく普通のサラリーマン家庭。まあ、貧乏じゃないけどね。それに、ここは普通より給料もいい方だと思うけど。この学校に入学したのだって、みんなとはちょっと理由が違ったじゃない。……とまあ、ネガティブになってたわけ」

 聖くんの家は、ご両親共に敬虔なカトリックだ。家族全員、生まれてすぐ洗礼を受けている。

 この学校では学年に1人か2人そういう生徒がいる。いわゆる“信者さん”だ。
 信者さんの生徒は、ミサのお手伝いをしたり宗教的な行事のリーダーになる。
 聖くんも幼稚園期からお手伝いをしていた。

「……ネガティブだね。雅ちゃんが何を求めているか、わからない聖くんじゃないでしょ? 出会って24年、何見てきたの? 雅ちゃんが社会的立場を気にする? そんな人に見える? 雅ちゃんは、人としての聖くんを見ているの。二人は純粋に愛を育んできたんじゃないの? そういう考え方、雅ちゃんに失礼だわ!」

 ああ、まずい!
 ついつい言い過ぎてしまった。
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