離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「俺もこの半年間は、この会社を率いていけるのか試されていたからな」
「え、社長があなたを?」
玲司が跡を継ぐ予定の北山グループは、旧財閥の日本でも三本の指に入る巨大企業グループだ。
本業である北山商事株式会社を中心に、グループ内で取り扱っていない事業はないと言われるほどだ。
そのトップに立つ予定の人間を、従業員が二百人にも満たない会社の社長が試すなんて。
「それだけここを大切に思っているってことだ。彼と俺はもとはと言えばゴルフ仲間で、彼が北山の関連病院に入院をしていると聞いて見舞ったのがきっかけで、俺がここを任されることになったんだ」
中野社長は私たち社員を不安にさせないために、入院も隠し通していたらしい。
玲司の簡潔な説明を聞いてもなお、納得できなかった。
「なんでこんな上場もしていない、小さな会社を?」
私はこのライエッセが好きだし、ここで仲間と働いていることを誇りに思っている。
けれど一般的に見れば、まだまだ発展途上の小さな会社であることは変わりない。
ましてや大きな組織のトップに立つ玲司が直々に、この会社の社長となるのかわからない。
「小さな会社? 君は十分この会社の価値を理解していると思っていたが、俺の勘違いか? 君も中野社長と一緒にこの会社に尽力してきたと理解していたんだが。まさか俺にその価値がわからないとでも言いたいのか?」
私が仕事に打ち込んだのは、玲司を忘れるため。それなのにその結果、また彼とこうして出会ってしまうなんて、なんて皮肉なんだろう。
「失礼な質問をしたわ。ごめんなさい」
「さっきも言ったが、俺は慈善事業でやってきたわけじゃない。この会社の持つ技術と可能性が今後の北山を大きくする事業のひとつになると判断して、自らここにやってきた」
玲司ほどの立場の人間ならば、ほかの人に任せることもできたはず。
しかしそうせずに、本人がここに来たということは、それだけライエッセに価値があると言っているようなものだ。
もう事業譲渡は決まって、この会社は北山グループの傘下に入る。今さら私がどうあがいたところでどうにもできない。
それならば、中野社長が託した玲司を信じて最善を尽くすのが今の私がやるべきことだ。
私は黙って玲司の言葉にうなずく。
「君には覚悟を持って、俺についてきてほしい」
〝ついていく〟? またあなたに?
「え、社長があなたを?」
玲司が跡を継ぐ予定の北山グループは、旧財閥の日本でも三本の指に入る巨大企業グループだ。
本業である北山商事株式会社を中心に、グループ内で取り扱っていない事業はないと言われるほどだ。
そのトップに立つ予定の人間を、従業員が二百人にも満たない会社の社長が試すなんて。
「それだけここを大切に思っているってことだ。彼と俺はもとはと言えばゴルフ仲間で、彼が北山の関連病院に入院をしていると聞いて見舞ったのがきっかけで、俺がここを任されることになったんだ」
中野社長は私たち社員を不安にさせないために、入院も隠し通していたらしい。
玲司の簡潔な説明を聞いてもなお、納得できなかった。
「なんでこんな上場もしていない、小さな会社を?」
私はこのライエッセが好きだし、ここで仲間と働いていることを誇りに思っている。
けれど一般的に見れば、まだまだ発展途上の小さな会社であることは変わりない。
ましてや大きな組織のトップに立つ玲司が直々に、この会社の社長となるのかわからない。
「小さな会社? 君は十分この会社の価値を理解していると思っていたが、俺の勘違いか? 君も中野社長と一緒にこの会社に尽力してきたと理解していたんだが。まさか俺にその価値がわからないとでも言いたいのか?」
私が仕事に打ち込んだのは、玲司を忘れるため。それなのにその結果、また彼とこうして出会ってしまうなんて、なんて皮肉なんだろう。
「失礼な質問をしたわ。ごめんなさい」
「さっきも言ったが、俺は慈善事業でやってきたわけじゃない。この会社の持つ技術と可能性が今後の北山を大きくする事業のひとつになると判断して、自らここにやってきた」
玲司ほどの立場の人間ならば、ほかの人に任せることもできたはず。
しかしそうせずに、本人がここに来たということは、それだけライエッセに価値があると言っているようなものだ。
もう事業譲渡は決まって、この会社は北山グループの傘下に入る。今さら私がどうあがいたところでどうにもできない。
それならば、中野社長が託した玲司を信じて最善を尽くすのが今の私がやるべきことだ。
私は黙って玲司の言葉にうなずく。
「君には覚悟を持って、俺についてきてほしい」
〝ついていく〟? またあなたに?