離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 あの状況なら、私だって同じことをするはずだから。

「琴葉さん」

 涙を流すお義母さんに抱きしめられた。背中に手を回すと当時よりも少しやせたように思えた。それもまた彼女の苦労を表しているようで胸が痛い。

 四年間という時間の重みも感じずにはいられなかった。

 久しぶりにお義母さんと会って、過去の謝罪を受けた。

 私も当時の自分を反省し、もっと玲司とふたりで話し合っていくことを約束する。

「玲司は北山家とは関係ないことろで育てたかったのに、結局巻き込んでしまってごめんなさい」

「母さん、四年前も今も、俺はすでに大人だった。自分で考えて関わることにしたんだから、母さんが申し訳なく思う必要はない」

 玲司は母親の気持ちを理解しながらも、自分の気持ちを伝えた。

「今はまだ父親というより、会長と言ったほうがしっくりくる。この先もずっとそうなのかもしれない。けど会えなくなってから会っておけばよかったって思いたくないんだ。俺の血のつながった人だから」

 玲司が北山家を関わることを決めた理由を話してくれた。

「それに琴葉を傷つけたことについては許しがたいが、憎しみは不幸しか生まない。それにみんなそれぞれに傷ついている。これ以上は負の連鎖を続けたくないんだ」

 関わってきた人それぞれに、正義も痛みもあった。間違った選択を取り消すことはできないが、やり直すことはできる。

「だから俺は琴葉と幸せになる。もう間違えない」

 彼は隣に座る私に同意を求めてきた。私はそれに笑顔でうなずく。

 それからしばらく今後の予定を話したあと、私たちは玄関でお義母さんに見送られていた。

 玄関から外に一歩でた玲司が、思い出したかのように振り向いた。

「そういえば、会長が母さんがなかなか会ってくれないって嘆いていたよ。少しくらいは優しくしてあげたら?」

 意外な提案にお義母さんは苦笑いをしている。

「私たちがふたりで会っても、話をすることなんてないわ。それに亡くなった奥様にも悪いもの」

「そっか、母さんの考えはわかった。でもこれからは俺の両親として会うこともあるだろうから、適当にうまくやってよ。会ってみれば案外たのしいかもしれないし」

 玲司の軽い返しに、お義母さんも「考えておくわ」と軽く返事をしていた。

 車に乗ると玲司はちらっと自宅のほうを見て呟いた。
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