離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 せっかく彼が気を遣ってくれているのに、話を蒸し返すようで悪いが、それでもちゃんと彼には伝えたかった。

「で、話ってなんなん?」

 せっかちな彼は待てなかったのか、用件を聞いてきた。

「あの、実は」

 私はつけていた手袋を外しながら、口を開く。

「ちょっと待て、これはなんや?」

「あっ」

 話をする前に彼が私の薬指にある指輪に気がついた。

「いったいどういうことや?」

 驚いた君塚に、事情を説明するように迫られる」

「このことで、話をしておこうと思って。実は私再婚するの」

「はぁああああ?」

 彼の声が比較的静かな朝のカフェに響く。

「ちょっと、声が大きいわよ」

「悪い。でもデカい声あげたくもなるわ。なんや、この間までそんなこと言ってなかったやないか」

 彼がそう言うのも無理もない。

「なんやそれ。でもお前元旦那のことはええんか? ずっと忘れられへんねんやろ?もうあきらめたんか」

「それが……元夫と再婚するの」

「なんやて!」

 またもや大きな声を出す君塚。次に出したら、店から追い出されそうだ。

「しー静かに。そうやって驚くと思ったから、君塚には先に話をしておきたかったの。大事な同期だし」

 無意識とはいえ、彼を振り回してしまったことは間違いない。

「そっか~。まぁでも、ほかの男なら納得できへんかったかもしらんけど、元夫ならしゃーないよな。ずっと好きやったんやもんな」

 君塚は複雑な心境だろうに、おおむね好意的に私の再婚を受け入れているようだ。

「おめでとう、琴葉。お祝いせなあかんな」

 祝いの言葉をもらったが、まだ大事なことを話せていない。

「あの。実はまだ話は続いていて」

「なんや、いったい。ほかになにがあるんや。まあ。お前の結婚ほど驚く内容ではないやろな」

 たかをくくったであろう君塚は、コーヒーを飲みながら私の話に耳を傾けた。

「実は相手は、北山社長なの」

 相手を聞いた君塚は目を見開いたあと、ごほごほとコーヒーでむせてせき込んだ。ああ、また周りの人の何事だ? というような視線が刺さる。

「大丈夫?」

 私はトレイに乗せてあった紙ナプキンを彼に渡すと、それで口元や手を拭いながら私のほうに大きく身を乗り出した。

「どういうこっちゃ、ちゃんと説明せいや」
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