離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「知らないわよ、聞いてない」
首を振って小さな声で君塚の問いかけに答えていた私は、登壇した人物を見てもっとおどろいた。
「中野社長!」
社員たちの喜びの声があがる。中野社長は社員たちに軽く手を上げて応えると、玲司の隣に並んだ。
「わたくしから紹介する必要はないかもしれませんが、創業者である中野氏にもう一度この会社の経営をお願いしようと思っています」
その言葉に会場から拍手が沸き起こる。
「では、中野さんからお話をお願いします」
少しやせたけれど顔色はよさそうだ。最後に会ったときよりもずっと元気そうに見える。
「皆様お久し振りです、中野です。いやぁ、まさかもう一度ライエッセで働くことになるとは、会社を譲った際には夢にも思いませんでした。実はこの話が出たときも、引き受けるかどうか本当に迷いました。でも……」
感極まった中野社長の目に涙が浮かんでいる。それにつられて私も胸がいっぱいになり、目頭が熱くなる。
「でも、もう一度わたしがやれると言うなら、北山さんとそして支えてくれる従業員たちを信じてもう一度頑張ってみようと心に決めました。みなさままたよろしくお願いいたします」
みんなの前に立つ中野社長は、希望に満ちた顔をしている。
また彼と一緒に働ける、みんながそれを楽しみにしているのが空気で伝わってくる。
玲司が中野社長からマイクを受け取ると、周囲を見渡して口を開いた。
「わたしがこのライエッセに関わったのは一年九カ月。とても短い間でしたが、お客様と従業員に支えられてここまでやってこれました。これからは北山グループの仕事をすることになりますが、このライエッセも我グループの大切な会社です。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
玲司が深く頭を下げると、中野社長もそれに合わせて頭を下げていた。そしてふたりは晴れやかな顔で握手をして壇上から降りた。
「なぁ、なんかお前の旦那やっぱりすごいな」
「本当にそうだよ。私たちが望んでいることよく理解してるよね」
同期ふたりに玲司を褒められてうれしくなる。
「私の夫、すごくカッコいいでしょう?」
否定せずにのろけると、呆れた視線を向けられたあとふたりとも笑い出した。
「そこは謙遜するべきとこやで」
「そうそう」
ふたりはそう言うけれど、きっと今日くらいは許してくれるだろう。
「たまにはいいじゃないの」
首を振って小さな声で君塚の問いかけに答えていた私は、登壇した人物を見てもっとおどろいた。
「中野社長!」
社員たちの喜びの声があがる。中野社長は社員たちに軽く手を上げて応えると、玲司の隣に並んだ。
「わたくしから紹介する必要はないかもしれませんが、創業者である中野氏にもう一度この会社の経営をお願いしようと思っています」
その言葉に会場から拍手が沸き起こる。
「では、中野さんからお話をお願いします」
少しやせたけれど顔色はよさそうだ。最後に会ったときよりもずっと元気そうに見える。
「皆様お久し振りです、中野です。いやぁ、まさかもう一度ライエッセで働くことになるとは、会社を譲った際には夢にも思いませんでした。実はこの話が出たときも、引き受けるかどうか本当に迷いました。でも……」
感極まった中野社長の目に涙が浮かんでいる。それにつられて私も胸がいっぱいになり、目頭が熱くなる。
「でも、もう一度わたしがやれると言うなら、北山さんとそして支えてくれる従業員たちを信じてもう一度頑張ってみようと心に決めました。みなさままたよろしくお願いいたします」
みんなの前に立つ中野社長は、希望に満ちた顔をしている。
また彼と一緒に働ける、みんながそれを楽しみにしているのが空気で伝わってくる。
玲司が中野社長からマイクを受け取ると、周囲を見渡して口を開いた。
「わたしがこのライエッセに関わったのは一年九カ月。とても短い間でしたが、お客様と従業員に支えられてここまでやってこれました。これからは北山グループの仕事をすることになりますが、このライエッセも我グループの大切な会社です。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
玲司が深く頭を下げると、中野社長もそれに合わせて頭を下げていた。そしてふたりは晴れやかな顔で握手をして壇上から降りた。
「なぁ、なんかお前の旦那やっぱりすごいな」
「本当にそうだよ。私たちが望んでいることよく理解してるよね」
同期ふたりに玲司を褒められてうれしくなる。
「私の夫、すごくカッコいいでしょう?」
否定せずにのろけると、呆れた視線を向けられたあとふたりとも笑い出した。
「そこは謙遜するべきとこやで」
「そうそう」
ふたりはそう言うけれど、きっと今日くらいは許してくれるだろう。
「たまにはいいじゃないの」