離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
その人がずっとひとりで抱えてきた秘密が、今日明らかになった。
「全部聞いたのね。あなたの父親が誰だか」
「北山誠司、北山グループの代表が俺の父親だって本当?」
訪ねてきた秘書から聞いたことを、確認している。今まで見たことのない表情の玲司を見て私はいたたまれない気持ちで彼の隣に座って様子をうかがっていた。
「そうよ。北山誠司があなたの父親で間違いないわ」
玲司ははぁとため息をついてうなだれる。
「どうして今まで、一度も話してくれなかったんだ」
「それは、彼はあなたの生物学上の父親ではあるけれど、私はその役目を求めなかったからよ」
お義母さんの表情はどこか悲しげで、しかしはっきりとした口調から今もその選択を後悔していないということが伝わってきた。
「当時私と誠司さんはお付き合いをしていたの。でも彼にお見合いの話があって私が身を引いた。それは最初から覚悟していたことだから悲しかったけれど、納得していたの」
落ち着いたお義母さんの話に耳を傾ける。
「別れて一カ月後、あなたがお腹の中にいることがわかったの。でも彼はすでにお見合い相手との結婚が決まっていた。私はそれを邪魔するつもりがなかったから、彼に黙ってあなたを産んだのよ。私は今でもその選択を後悔してない」
強いまなざしにお義母さんの当時の覚悟がうかがい知れた。
「あなたにはたくさん苦労をかけたわね。でもあなたは私の宝物で支えだった。それは今でも変わらない。ただ……父親が誰だか知る権利、そしてその父親との交流を私が勝手に絶ってしまったことに関しては心から申し訳なく思っているわ」
それまで淡々と語っているように見えたお義母さんの表情がゆがみ、声が震えていた。その様子からどれほどの葛藤を抱えながら、これまで生きてきたのかと言うのが伝わってくる。
玲司もそれを受け止めながら、心の中にうずまく色々な感情に向き合っているようだ。下を向いたまま、膝の上に置いてある手を強く握りしめている。
強くて優しい私の夫。彼がこれまで抱えてきたものをはじめて目にした私は、なにもできないことに焦りを感じている。
そっと強く握られた彼の手に自分の手を重ねた。親子の間に長い年月をかけたであろう出来事を、それを知らない私が口出すべきではない。
「全部聞いたのね。あなたの父親が誰だか」
「北山誠司、北山グループの代表が俺の父親だって本当?」
訪ねてきた秘書から聞いたことを、確認している。今まで見たことのない表情の玲司を見て私はいたたまれない気持ちで彼の隣に座って様子をうかがっていた。
「そうよ。北山誠司があなたの父親で間違いないわ」
玲司ははぁとため息をついてうなだれる。
「どうして今まで、一度も話してくれなかったんだ」
「それは、彼はあなたの生物学上の父親ではあるけれど、私はその役目を求めなかったからよ」
お義母さんの表情はどこか悲しげで、しかしはっきりとした口調から今もその選択を後悔していないということが伝わってきた。
「当時私と誠司さんはお付き合いをしていたの。でも彼にお見合いの話があって私が身を引いた。それは最初から覚悟していたことだから悲しかったけれど、納得していたの」
落ち着いたお義母さんの話に耳を傾ける。
「別れて一カ月後、あなたがお腹の中にいることがわかったの。でも彼はすでにお見合い相手との結婚が決まっていた。私はそれを邪魔するつもりがなかったから、彼に黙ってあなたを産んだのよ。私は今でもその選択を後悔してない」
強いまなざしにお義母さんの当時の覚悟がうかがい知れた。
「あなたにはたくさん苦労をかけたわね。でもあなたは私の宝物で支えだった。それは今でも変わらない。ただ……父親が誰だか知る権利、そしてその父親との交流を私が勝手に絶ってしまったことに関しては心から申し訳なく思っているわ」
それまで淡々と語っているように見えたお義母さんの表情がゆがみ、声が震えていた。その様子からどれほどの葛藤を抱えながら、これまで生きてきたのかと言うのが伝わってくる。
玲司もそれを受け止めながら、心の中にうずまく色々な感情に向き合っているようだ。下を向いたまま、膝の上に置いてある手を強く握りしめている。
強くて優しい私の夫。彼がこれまで抱えてきたものをはじめて目にした私は、なにもできないことに焦りを感じている。
そっと強く握られた彼の手に自分の手を重ねた。親子の間に長い年月をかけたであろう出来事を、それを知らない私が口出すべきではない。