離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
中野社長自身は今でも自ら案件を抱えるほどフットワークが軽い。だから社内で見かけない日も多かった。
基本的に社員の自主性に任せているスタンスなのでそれでも問題ないのだが、会って話したほうがいいこともある。
「うん。それで琴葉を呼んでる。すぐに来てって」
「わかった、ありがとう」
業務報告はつねに行っているが、やはり対面でやり取りをするのも大切だ。
そういえば会ったら相談しようと思っていたことがいくつかあったので、私はそれを書き留めた手帳を手に社長室に向かう。
一度フロアを出て管理部門のフロアに入る。
その最奥にある社長室は、普段社員がコミュニケーションを取りやすいようにガラス張りで外からも中の様子がうかがえるようになっている。
しかし今日はブラインドが降りていた。
こんな朝早くから、来客?
めったにないことに不思議に思いながらも、春香の口ぶりでは急ぎのようだったのですぐにノックをした。
「鳴滝です」
「どうぞ~」
いつも通りの少し気の抜けた雰囲気の返事があってドアを開けて中に入る。
応接セットに座っている中野社長の様子に違和感を覚えた。
少しやせた?
もともとがっしりした体格ではないので、近しい人でなければ気にならないだろうが頬のあたりが少しほっそりしたように思えた。
表情はいつも通り穏やかで、柔らかい笑みを浮かべている。
彼の様子に気を取られて、その向かいに座っている人物に気がつくのが遅れた。やっぱり来客だったようだ。
「あの、来客中であればまたあとから来ます」
入室許可を得たものの、先客がいるならここは辞するべきだと出ていこうとする。しかし中野社長がそれを止めた。
「いやいいんだ。彼に君を紹介したかったからね」
その言葉で男性のほうに視線を向けると、その人も同時にこちらを振り向いた。そしてその瞬間、私はその場で固まってしまった。
その時間は数秒だっただろう。けれどその間に呼吸すら止めた私は頭の中で過去の記憶が嵐の様に自分に襲い掛かってきているのに必死に耐えていた。
なんで、今になって……。
ショックで思考回路が低下していた私を現実に戻したのは、その男性の声だった。
「久しぶりだね。琴葉」
「……れ、いじ」
無意識に相手の名前を呼んでいた。再会の衝撃に今の状況をすっかり忘れて。
基本的に社員の自主性に任せているスタンスなのでそれでも問題ないのだが、会って話したほうがいいこともある。
「うん。それで琴葉を呼んでる。すぐに来てって」
「わかった、ありがとう」
業務報告はつねに行っているが、やはり対面でやり取りをするのも大切だ。
そういえば会ったら相談しようと思っていたことがいくつかあったので、私はそれを書き留めた手帳を手に社長室に向かう。
一度フロアを出て管理部門のフロアに入る。
その最奥にある社長室は、普段社員がコミュニケーションを取りやすいようにガラス張りで外からも中の様子がうかがえるようになっている。
しかし今日はブラインドが降りていた。
こんな朝早くから、来客?
めったにないことに不思議に思いながらも、春香の口ぶりでは急ぎのようだったのですぐにノックをした。
「鳴滝です」
「どうぞ~」
いつも通りの少し気の抜けた雰囲気の返事があってドアを開けて中に入る。
応接セットに座っている中野社長の様子に違和感を覚えた。
少しやせた?
もともとがっしりした体格ではないので、近しい人でなければ気にならないだろうが頬のあたりが少しほっそりしたように思えた。
表情はいつも通り穏やかで、柔らかい笑みを浮かべている。
彼の様子に気を取られて、その向かいに座っている人物に気がつくのが遅れた。やっぱり来客だったようだ。
「あの、来客中であればまたあとから来ます」
入室許可を得たものの、先客がいるならここは辞するべきだと出ていこうとする。しかし中野社長がそれを止めた。
「いやいいんだ。彼に君を紹介したかったからね」
その言葉で男性のほうに視線を向けると、その人も同時にこちらを振り向いた。そしてその瞬間、私はその場で固まってしまった。
その時間は数秒だっただろう。けれどその間に呼吸すら止めた私は頭の中で過去の記憶が嵐の様に自分に襲い掛かってきているのに必死に耐えていた。
なんで、今になって……。
ショックで思考回路が低下していた私を現実に戻したのは、その男性の声だった。
「久しぶりだね。琴葉」
「……れ、いじ」
無意識に相手の名前を呼んでいた。再会の衝撃に今の状況をすっかり忘れて。