離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「北山社長にもご迷惑をおかけしました。今後彼女とは、適切な距離を保ち接していきます」
「そうか、鳴滝さんがそれでいいって言うなら、俺からこれ以上なにか言うことはない。俺は彼女から少し話を聞く予定があるから、君は先に帰りなさい」
話があるって、なんの話だろうか。尋ねなくても予想はついている。
「あの、私も……今日はもう遅いのでこのくらいで」
遠まわしにもう帰りたいと伝えてみる。しかしそれを玲司が許してくれるわけなかった。
「いや君からは少し話を聞いておく必要があるから。君塚くんお疲れさまでした」
まるで追い出すかのように、君塚を送り出す。彼は気まずさも手伝ってすぐにフロアを出て行った。
さっきは君塚のことを一瞬だけど怖いと思ったのに、今はこの場にとどまっていてほしかったという思いがある。
思わず未練がましく君塚の背中を追いかけてしまう。
「琴葉」
「は、はい」
もう下の名前を呼ばれても、訂正する気力すら残っていない。
振り向いて顔を上げると、にっこりと笑みを浮かべる玲司がいた。
「ちょっと俺と話そうか?」
私に判断をゆだねているようで、答えは〝はい〟しかないこの状況だ。
私がうなずくと彼はデスクに置いてあった私のバッグと掴んだ。
「ついて来てほしいところがある」
「ど、どこに行くんですか?」
「ついてくればわかるから。それに大事な話をするのに誰かが来て邪魔されたくない」
たしかにこれからする話は、会社でしないほうがいい。抵抗したところで今日はきっと話をするまで帰してくれないだろう。バッグはすでに人質ならぬモノ質にされてしまっている。
「わかりました」
「素直でよろしい」
彼は満足したようにうなずくと、私のバッグを持ったまま歩き出した。
会社の前でタクシーに乗る。彼が告げた住所を聞いてまさかと思ったが目的地に近付くにつれて予想が当たっているのを確信した。
そしてタクシーが停車する。ドアが開いたのに私は下りるのをためらってしまった。
「琴葉、下りて?」
「うん」
なんとなくこの四年間ずっと避けていた場所だ。なぜ今になって連れてこられたのかわからないが、ここは彼の言う通りにするしかない。
エレベーターに乗ると、無意識に四階のボタンを押した。体がまだあの頃の習慣を覚えているのが不思議だった。
「そうか、鳴滝さんがそれでいいって言うなら、俺からこれ以上なにか言うことはない。俺は彼女から少し話を聞く予定があるから、君は先に帰りなさい」
話があるって、なんの話だろうか。尋ねなくても予想はついている。
「あの、私も……今日はもう遅いのでこのくらいで」
遠まわしにもう帰りたいと伝えてみる。しかしそれを玲司が許してくれるわけなかった。
「いや君からは少し話を聞いておく必要があるから。君塚くんお疲れさまでした」
まるで追い出すかのように、君塚を送り出す。彼は気まずさも手伝ってすぐにフロアを出て行った。
さっきは君塚のことを一瞬だけど怖いと思ったのに、今はこの場にとどまっていてほしかったという思いがある。
思わず未練がましく君塚の背中を追いかけてしまう。
「琴葉」
「は、はい」
もう下の名前を呼ばれても、訂正する気力すら残っていない。
振り向いて顔を上げると、にっこりと笑みを浮かべる玲司がいた。
「ちょっと俺と話そうか?」
私に判断をゆだねているようで、答えは〝はい〟しかないこの状況だ。
私がうなずくと彼はデスクに置いてあった私のバッグと掴んだ。
「ついて来てほしいところがある」
「ど、どこに行くんですか?」
「ついてくればわかるから。それに大事な話をするのに誰かが来て邪魔されたくない」
たしかにこれからする話は、会社でしないほうがいい。抵抗したところで今日はきっと話をするまで帰してくれないだろう。バッグはすでに人質ならぬモノ質にされてしまっている。
「わかりました」
「素直でよろしい」
彼は満足したようにうなずくと、私のバッグを持ったまま歩き出した。
会社の前でタクシーに乗る。彼が告げた住所を聞いてまさかと思ったが目的地に近付くにつれて予想が当たっているのを確信した。
そしてタクシーが停車する。ドアが開いたのに私は下りるのをためらってしまった。
「琴葉、下りて?」
「うん」
なんとなくこの四年間ずっと避けていた場所だ。なぜ今になって連れてこられたのかわからないが、ここは彼の言う通りにするしかない。
エレベーターに乗ると、無意識に四階のボタンを押した。体がまだあの頃の習慣を覚えているのが不思議だった。