離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 あの事故がなければ、私たちが別れることはなかっただろう。お互い苦しむこともなかった。
 
 夕日に照らされた寝室に到着し、彼が私をゆっくりとベッドに下ろす。

「たしかに、真っ暗な四年だった。でもいつも琴葉を思うと明るくなっていったよ。君への思いを強くできた期間だと思うと、全部が全部無駄だったわけじゃない」

「さすが玲司だね。私あなたのそういうことろがすごく好き」

 私の隣に座っていた彼の顔を覗き込みながら伝えた。

 どんなに人生に絶望するようなことがあったとしても、その中で努力を重ねなにか大切なものを見つけていく。

「琴葉、今それを言うってことは、色々覚悟ができているってことだろうな?」

「ん?」

 最初は言っている意味がわからなくて首を傾げたが、すぐに理解した。彼の手が私の手を取りそこに口づけたのだ。

「あ、でもそういう意味じゃなくてーー」

「いや、煽ったのは君だ。責任は取らなくちゃいけない。そうだろう?」

「うん……えっ」

 思わずうなずいてしまったけれど、本当にそうだろうか。

「待って。私、煽ってなんかない」

「さっき琴葉はうなずいたよな。だからもう容赦はしない」

 ベッドに乗り上げた彼が、どんどん私に迫ってくる。そして鼻先がくっつくほど近くで囁いた。

「キスして、琴葉」

 彼の甘くて低い声は、まるで催眠術か媚薬のように私の脳内を支配していく。

 私は彼の首に腕を回し目を閉じた。そしてそっと彼の唇に私のそれを重ねた。

 唇を離して彼を見つめていると、彼は色気に満ちた目で私を誘惑する。

「琴葉、もっと欲しい」

 彼はそう言うや否や、私の後頭部に手を添えてキスをしてきた。深くて濃厚なキスに私の体がどんどん熱くなっていく。

 熱いキスに体がとろけはじめ、その激しさに唾液が唇の端からこぼれた。彼がそれをなめとると同時に、首筋に舌を這わせる。

 新しい刺激に体はビクンと大きく跳ねた。それに気をよくした彼がゆっくりとしかし確実に私を甘い艶美な罠に落としていく。

 刺激を敏感に感じたとった私が体をしならせると、そのタイミングに合わせて彼は私をうつぶせにした。

「服が邪魔だな」

 独り言のようにそう呟いた彼は、ワンピースの背中のファスナーを下ろしていく。

 素肌に直接空気が触れる。

「寒い?」

 私は声を出さずに、首を左右に振ってこたえた。
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