一番星になった君へ
第一章 大切な思い出
【明愛(めいあ)side】
『めいあ〜!あそぼーぜ!』
『いいよ〜!なにして遊ぶ〜?』
『じゃあ、あそこ行こーぜー!』
私の1番大切な記憶。
幼い男女二人が仲良く遊んでる。
ああ、懐かしいな……。
小さな女の子は、私の小さい頃だ。
その男の子は私の大親友の亜留(ある)。
この時はまだ4、5歳くらいだったかな。
『うんっ、いいねっ!』
『よっしゃ!早く行こうぜ!』
そう言って二人は走り出す。
『はぁ、着いた〜!』
着いた場所は、この町全体を見れる展望台だ。
海が近く、都会みたいな凄いところではないけど、田舎とも言えない、小さな町。
夜には星空が輝き、夏でも気持ちのいい風が吹く。
でも、この日は過去最高の暑い日だった。
セミが鳴いて、積乱雲が海の向こうに大きくある。
『やっぱりここはいつ見てもきれいだよねぇ』
『うんっ』
そう言いながら町を見渡す私と亜留。
『そういえば、今日、母さんが明愛のお母さんも連れてお家においでって言ってたよ』
『そうなの?ママに言っとくね!』
『じゃあ、そろそろお家に帰ろっか?』
『うん!』
こんな感じで二人で来てもそんなに長く展望台にいることは無い。
幼稚園児二人が遊びに行くんだもん、そんなに長くいられないよね。
『ママー!ただいま!亜留きてるよ〜!』
『あら、亜留くんいらっしゃい。今日はどうしたの?』
『母さんがお家に来ていいよって言ってた!』
『あら、そうなの?じゃあ今から準備していくわね。明愛も先に行ってていいわよ。』
『はぁい!行こう、ある!』
『うん!』
手を振ってるお母さんに手を振り返して、亜留の家に向かう。
この時、私が行かなかったらどうなってたんだろう?
『母さん、ただいま!』
『おかえり、亜留。明愛ちゃんもいらっしゃい、外暑かったでしょう?中に入って』
『おじゃましますっ!』
あるに家は金木犀とかすかに木材の匂いが混じった匂いだった。
今では金木犀の匂いが懐かしくてたまらなかった。
ーピーンポーン
しばらく亜留のお母さんと話をしてたら亜留の家のインターホンが鳴った。
『あ、ママかも!』
『じゃあ少し待っててね』
そう言って亜留のお母さんは玄関に向かう。
『えみさん、いらっしゃい』
『おじゃまします』
亜留のお母さんに連れられて私のお母さんがリビングに入ってくる。
『亜留、明愛ちゃんと遊んできなさい。』
『うん!わかった!めいあ遊ぼ!』
『いいよ!何して遊ぶ?』
この頃の私はお母さんたちが話す内容は私たちに関係ないかと思ってたけど、本当は関係あったんだよね。
『明愛、帰ったらちょっと話そうか』
『…?うん!』
この日はお母さんの様子が少しおかしかったんだけど、小さい頃の私にはあんまり分からなかった。
家に着くとお母さんは私をソファに座らせて、私と向き合う形で床にしゃがむ。
『あのね、明愛、亜留くん、お引越ししちゃうんだって』
『……?』
急にそんなこと言われても小さい私には分かるわけない。
『うーん、亜留くんは、ここじゃない、遠いところに行っちゃうの。だから、明日でお別れなの』
『そうなんだ、でもまた会えるでしょ?』
『……』
『ママ…?』
『もう、会えないかもしれないの』
『え?』
まだ状況を読み込めてない私は首を傾げるばかり。
『うそだよね!ママ!』
『嘘じゃないわ』
お母さんの目は真剣だったのを今でも覚えてる。
この日の私はそこから話の続きを聞くのが嫌で、二階の私の部屋に駆け込んだ。
その日はもう部屋から1歩も外に出なかった。出たくなかった。
『めいあー!あそぼー!』
朝起きると窓の外から亜留の声。
『いいよー!』
窓を開けて、無理やり作り笑いをする。
この時、亜留はなんにも聞いていないんだろうか。
何事もないようにいつものように私の家に来る。
それがまた私を悲しくさせたんだ。
外に出ようと階段をおりて玄関で靴を履く。
『おはよう、明愛。遊びに行くの?』
『…うん』
『そう、気をつけてね』
お母さんの言葉に頷いて行ってきますと元気よく言った。
『今日は何しようか!』
外に出ると亜留は笑顔で迎えに来てくれていた。
夕方まで遊ぶと亜留に手を引っ張られて亜留の家に来た。
亜留の家の前には大きなトラック。
『わぁ、この車大きいね!』
『そうだね!すごい大きい!』
夕方まで遊んでると私は亜留が引越しすることなんて忘れていた。
『亜留、そろそろ行くわよ』
『どこに〜?』
亜留のお母さんは私を見てから再び亜留に目を移した。
『今日から違う場所に行くのよ』
『へぇ、そうなんだ!楽しいところ?』
『ええ、きっと楽しいところよ』
『めいあも一緒?』
『明愛ちゃんは…一緒じゃないわ』
『そうなんだ、じゃあ、めいあとここでお別れだね!』
この時の亜留は、もう二度と会えないかもしれないとか思ってないんだろう。
『もうここには戻ってこないの?』
震える声で私は亜留のお母さんに言う。
『…ええ、仲良くしてくれてありがとうね』
亜留のお母さんは私に近づいて頭をぽんと撫でてくれた。
その手が暖かかったから、私は静かに涙を流す。
『めいあ…?なんで泣いてるの?』
その状況を見ていた亜留が私に駆け寄って首を傾げる。
『ある…』
『うん、なあに?』
夕日でオレンジ色に染まる亜留の顔は笑顔。
『また会いたい…会いたいよぉ…』
次から次へと流れてくる涙を拭う。
『ずっとお別れみたいなこと言わないで?また会えるよ!』
『本当?』
『うん!約束!』
指切りげんまんをして、亜留は大きなトラックに乗って見えなくなるまで私に手を振り続けてくれた。
『また、会えますように』
ボソッと独り言を言ってからお母さんと家に向かって歩き出すところで途切れていた。
「またあの夢……」
窓から5月の太陽の日が差し込んで目を覚ます。
今の私は高校1年生。
あの夢はもう11年くらい前の話。
ベットから背中を起こしてから、学校の用意をする。
用意が一通り終わってまだ着慣れてない制服を丁寧に着る。
「めいー?朝ごはんできたわよー」
一階から呼ぶお母さんに返事をして階段を駆け下りる。
「おはよう、めい」
「うん、おはよー」
お母さんの作ってくれた朝ごはんを食べてからまた二階に戻ってカバンを肩にかけて再び階段を駆け下りる。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「はーい」
家から高校まで自転車で15分掛かるか、かかんないかくらい。
学校に向かう時は、小学生の頃からの幼なじみの潤羽(うるは)と一緒に行くことになっている。
「めいー、おはよー!」
「おはよう、潤羽」
潤羽が来たら自転車に乗ってそのまま学校じゃなく、最初はコンビニに行ってお昼を買う。
お昼を選ぶだけで時間かかるからいつも遅刻ギリギリ。
今日もどれにするか選んでたらあっという間に15分。
「ほら、行くよー?」
「よし買った!飛ばしていくぞー!」
ーキーンコーンカーンコーン
「セーフッ!間に合ったー!」
教室に着くと同時に鐘がなる。
「おいコラ、間に合ってねーぞ」
もう教室にいた先生に言われると教室中に笑い声が響く。
「すいません」
潤羽と声を揃えて謝ると先生は笑いながらいいよと言って許してくれる。
「出席確認の前に、今日、転校生が来た。木澤入っていいぞー」
木澤…?
昔聞いたことのある名前だ。
もしかして…!
「はい。」
廊下から声がしてみんな一斉に廊下の方を見る。
入ってきたのは、茶髪で高身長の男の子。
「えー、木澤 亜留です。よろしく」
「亜留っ?!」
その男の子は紛れもない、小さい頃、引っ越して行ってしまった亜留だった。
「お、滝の知り合いか!それなら隣に行ってもらうか」
そう言って先生は私の机の隣に綺麗な机を持ってきた。
「わかんなかったら滝に聞けよー」
「分かりました」
亜留は私の隣にドスッと座ると早速こっちを見た。
「お前って明愛だよな?」
「え?あ、うん」
「変わってねーな」
ケラケラと笑う亜留は、昔見た無邪気な笑顔のままだった。
「ふふっ」
「何笑ってんだよ?」
「いや、懐かしいなって」
「たしかにな」
二人揃って笑うのは11年ぶり。
亜留は前を向いたかと思えばすぐに机に突っ伏す。
少しすれば微かに寝息が聞こえてきた。
寝るのが早いのは小さい頃から変わってないんだね。
懐かしいな……。
亜留は気持ちよさそうに寝るから私まで眠くなっちゃう。
そう思い、少しづつ私の視界は暗くなっていった。
『めいあ〜!あそぼーぜ!』
『いいよ〜!なにして遊ぶ〜?』
『じゃあ、あそこ行こーぜー!』
私の1番大切な記憶。
幼い男女二人が仲良く遊んでる。
ああ、懐かしいな……。
小さな女の子は、私の小さい頃だ。
その男の子は私の大親友の亜留(ある)。
この時はまだ4、5歳くらいだったかな。
『うんっ、いいねっ!』
『よっしゃ!早く行こうぜ!』
そう言って二人は走り出す。
『はぁ、着いた〜!』
着いた場所は、この町全体を見れる展望台だ。
海が近く、都会みたいな凄いところではないけど、田舎とも言えない、小さな町。
夜には星空が輝き、夏でも気持ちのいい風が吹く。
でも、この日は過去最高の暑い日だった。
セミが鳴いて、積乱雲が海の向こうに大きくある。
『やっぱりここはいつ見てもきれいだよねぇ』
『うんっ』
そう言いながら町を見渡す私と亜留。
『そういえば、今日、母さんが明愛のお母さんも連れてお家においでって言ってたよ』
『そうなの?ママに言っとくね!』
『じゃあ、そろそろお家に帰ろっか?』
『うん!』
こんな感じで二人で来てもそんなに長く展望台にいることは無い。
幼稚園児二人が遊びに行くんだもん、そんなに長くいられないよね。
『ママー!ただいま!亜留きてるよ〜!』
『あら、亜留くんいらっしゃい。今日はどうしたの?』
『母さんがお家に来ていいよって言ってた!』
『あら、そうなの?じゃあ今から準備していくわね。明愛も先に行ってていいわよ。』
『はぁい!行こう、ある!』
『うん!』
手を振ってるお母さんに手を振り返して、亜留の家に向かう。
この時、私が行かなかったらどうなってたんだろう?
『母さん、ただいま!』
『おかえり、亜留。明愛ちゃんもいらっしゃい、外暑かったでしょう?中に入って』
『おじゃましますっ!』
あるに家は金木犀とかすかに木材の匂いが混じった匂いだった。
今では金木犀の匂いが懐かしくてたまらなかった。
ーピーンポーン
しばらく亜留のお母さんと話をしてたら亜留の家のインターホンが鳴った。
『あ、ママかも!』
『じゃあ少し待っててね』
そう言って亜留のお母さんは玄関に向かう。
『えみさん、いらっしゃい』
『おじゃまします』
亜留のお母さんに連れられて私のお母さんがリビングに入ってくる。
『亜留、明愛ちゃんと遊んできなさい。』
『うん!わかった!めいあ遊ぼ!』
『いいよ!何して遊ぶ?』
この頃の私はお母さんたちが話す内容は私たちに関係ないかと思ってたけど、本当は関係あったんだよね。
『明愛、帰ったらちょっと話そうか』
『…?うん!』
この日はお母さんの様子が少しおかしかったんだけど、小さい頃の私にはあんまり分からなかった。
家に着くとお母さんは私をソファに座らせて、私と向き合う形で床にしゃがむ。
『あのね、明愛、亜留くん、お引越ししちゃうんだって』
『……?』
急にそんなこと言われても小さい私には分かるわけない。
『うーん、亜留くんは、ここじゃない、遠いところに行っちゃうの。だから、明日でお別れなの』
『そうなんだ、でもまた会えるでしょ?』
『……』
『ママ…?』
『もう、会えないかもしれないの』
『え?』
まだ状況を読み込めてない私は首を傾げるばかり。
『うそだよね!ママ!』
『嘘じゃないわ』
お母さんの目は真剣だったのを今でも覚えてる。
この日の私はそこから話の続きを聞くのが嫌で、二階の私の部屋に駆け込んだ。
その日はもう部屋から1歩も外に出なかった。出たくなかった。
『めいあー!あそぼー!』
朝起きると窓の外から亜留の声。
『いいよー!』
窓を開けて、無理やり作り笑いをする。
この時、亜留はなんにも聞いていないんだろうか。
何事もないようにいつものように私の家に来る。
それがまた私を悲しくさせたんだ。
外に出ようと階段をおりて玄関で靴を履く。
『おはよう、明愛。遊びに行くの?』
『…うん』
『そう、気をつけてね』
お母さんの言葉に頷いて行ってきますと元気よく言った。
『今日は何しようか!』
外に出ると亜留は笑顔で迎えに来てくれていた。
夕方まで遊ぶと亜留に手を引っ張られて亜留の家に来た。
亜留の家の前には大きなトラック。
『わぁ、この車大きいね!』
『そうだね!すごい大きい!』
夕方まで遊んでると私は亜留が引越しすることなんて忘れていた。
『亜留、そろそろ行くわよ』
『どこに〜?』
亜留のお母さんは私を見てから再び亜留に目を移した。
『今日から違う場所に行くのよ』
『へぇ、そうなんだ!楽しいところ?』
『ええ、きっと楽しいところよ』
『めいあも一緒?』
『明愛ちゃんは…一緒じゃないわ』
『そうなんだ、じゃあ、めいあとここでお別れだね!』
この時の亜留は、もう二度と会えないかもしれないとか思ってないんだろう。
『もうここには戻ってこないの?』
震える声で私は亜留のお母さんに言う。
『…ええ、仲良くしてくれてありがとうね』
亜留のお母さんは私に近づいて頭をぽんと撫でてくれた。
その手が暖かかったから、私は静かに涙を流す。
『めいあ…?なんで泣いてるの?』
その状況を見ていた亜留が私に駆け寄って首を傾げる。
『ある…』
『うん、なあに?』
夕日でオレンジ色に染まる亜留の顔は笑顔。
『また会いたい…会いたいよぉ…』
次から次へと流れてくる涙を拭う。
『ずっとお別れみたいなこと言わないで?また会えるよ!』
『本当?』
『うん!約束!』
指切りげんまんをして、亜留は大きなトラックに乗って見えなくなるまで私に手を振り続けてくれた。
『また、会えますように』
ボソッと独り言を言ってからお母さんと家に向かって歩き出すところで途切れていた。
「またあの夢……」
窓から5月の太陽の日が差し込んで目を覚ます。
今の私は高校1年生。
あの夢はもう11年くらい前の話。
ベットから背中を起こしてから、学校の用意をする。
用意が一通り終わってまだ着慣れてない制服を丁寧に着る。
「めいー?朝ごはんできたわよー」
一階から呼ぶお母さんに返事をして階段を駆け下りる。
「おはよう、めい」
「うん、おはよー」
お母さんの作ってくれた朝ごはんを食べてからまた二階に戻ってカバンを肩にかけて再び階段を駆け下りる。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「はーい」
家から高校まで自転車で15分掛かるか、かかんないかくらい。
学校に向かう時は、小学生の頃からの幼なじみの潤羽(うるは)と一緒に行くことになっている。
「めいー、おはよー!」
「おはよう、潤羽」
潤羽が来たら自転車に乗ってそのまま学校じゃなく、最初はコンビニに行ってお昼を買う。
お昼を選ぶだけで時間かかるからいつも遅刻ギリギリ。
今日もどれにするか選んでたらあっという間に15分。
「ほら、行くよー?」
「よし買った!飛ばしていくぞー!」
ーキーンコーンカーンコーン
「セーフッ!間に合ったー!」
教室に着くと同時に鐘がなる。
「おいコラ、間に合ってねーぞ」
もう教室にいた先生に言われると教室中に笑い声が響く。
「すいません」
潤羽と声を揃えて謝ると先生は笑いながらいいよと言って許してくれる。
「出席確認の前に、今日、転校生が来た。木澤入っていいぞー」
木澤…?
昔聞いたことのある名前だ。
もしかして…!
「はい。」
廊下から声がしてみんな一斉に廊下の方を見る。
入ってきたのは、茶髪で高身長の男の子。
「えー、木澤 亜留です。よろしく」
「亜留っ?!」
その男の子は紛れもない、小さい頃、引っ越して行ってしまった亜留だった。
「お、滝の知り合いか!それなら隣に行ってもらうか」
そう言って先生は私の机の隣に綺麗な机を持ってきた。
「わかんなかったら滝に聞けよー」
「分かりました」
亜留は私の隣にドスッと座ると早速こっちを見た。
「お前って明愛だよな?」
「え?あ、うん」
「変わってねーな」
ケラケラと笑う亜留は、昔見た無邪気な笑顔のままだった。
「ふふっ」
「何笑ってんだよ?」
「いや、懐かしいなって」
「たしかにな」
二人揃って笑うのは11年ぶり。
亜留は前を向いたかと思えばすぐに机に突っ伏す。
少しすれば微かに寝息が聞こえてきた。
寝るのが早いのは小さい頃から変わってないんだね。
懐かしいな……。
亜留は気持ちよさそうに寝るから私まで眠くなっちゃう。
そう思い、少しづつ私の視界は暗くなっていった。
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