クレジット人間-遊園地から脱出せよ!-
繭乃がハッキリとした声で告げる。

私はゴクリとつばを飲み込んで観覧車へ視線を向けた。

観覧車のゴンドラはさっきよりも少し上の方へ移動していて、男の子の姿が小さく見える。

その姿を視線で追いかけながら、右手で自分の腹部に触れた。

服の上からでもわかる不自然な硬さがある。

あの機械が自分にも取り付けられているのだと思うと全身から冷や汗が溢れ出す。

そっとジャージをまくりあげ、手を服の中に入れてみた。

指先がコツンッと硬いものにあたった瞬間、絶望を感じた。

もう見なくてもわかる。

私にも機械が取り付けられていて、ゲームで負ければ体の動きを制御される。

どれだけ嫌なことでも、やらされてしまう。

そう理解したとき、園の奥からバスが走ってくるのが見えた。

それは遊園地の中を走っているバスのようで、側面には緑色のクマの絵が描かれている。

普通は子どもたちを乗せてゆっくり運行しているはずのそのバスが勢いよくこちらへ向けてやってくるのだ。

私達はバスの邪魔にならないように芝生の上に逃げた。

と、バスが急カーブをしたかと思うと、バスの後ろにロープが下がっているのが見えた。

そのロープには女の子が腕を縛られた状態で引きずられている。
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