クレジット人間-遊園地から脱出せよ!-
「な……なに考えてるの!?」



「少し黙って。呼吸音がどんどん小さくなっていくよ。こういうの、視聴者さんはとっても好きなんだ」




吸って、吐いて、吸って、吐いて。

トクンッ、トクンッ、トクンッ。

そのリズムは徐々に間が飽き始める。

吸って……吐いて……吸って……吐いて。

トクンッ……トクンッ。

それをクマは黙ってみている。

今なら助かるかも知れないのに、配信している。

怒りがこみ上げてきて呼吸をすることも忘れてしまいそうになる。

吸って……吐いて…………吸って……。

トクンッ……トクンッ………トッ。

スーっと呼吸音が消えていくのがわかった。

苦しげに歪んでいた表情が弛緩して柔らかくなる。

クマはそのすべてを撮影するとゆっくりと立ち上がった。

そして振り向く。


「弱い者が死ぬのは普通だ。企業は腹黒くても強い人間を求めている」




そう言うと歩き去ってしまったのだった。
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