クレジット人間-遊園地から脱出せよ!-
「私ひとりで行ってみるから、みんなはここで待ってて」




私達は慌てて立ち上がって繭乃の後を追いかけた。




「こんなところでひとりで行動するのは危ないよ」




後ろから声をかけると繭乃が一旦振り返り、そしてニヤリと笑ってみせた。

みんながついてきてくれるとわかっていて行動にうつしたのだろう。

歩いている間にも悲鳴や鳴き声が聞こえてきて耳を塞いでしまいたくなる。

だけど実際にはなにもしなかったのは、きっと私自身がこの異様な状況に順応しつつあるからだろう。

重たい足を無理やり動かしてたどり着いたのはジュエリーショップの前だった。

世界的に有名なブランドショップで、指輪ひとつ10万円は下らないはずだ。

こんな場所、学生の私達には縁遠い場所だ。

しかし繭乃は今目をキラキラと輝かせてそのショップのショーウィンドーを見つめている。

その視線の先にあるのは3億円という値段がつけられた大きなダイヤモンドだ。

宝石なんて滅多に見たことのない私でも、その輝きが本物であるとわかるくらいきらびやかだ。
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