クレジット人間-遊園地から脱出せよ!-
アルバイト経験のある尋ならそんなに心配することもなさそうだ。




「気をつけてね」




クレープ屋へ向かう尋の背中にそう声をかける。

一見普通に働いているように見えるけれど、実際はどうなのかわからないのがこの遊園地の恐いところだ。

尋のことが心配でずっとクレープ屋の近くにいたい気持ちだったけれど、繭乃の「疲れた」という一言で再びベンチに戻ることになった。




「結構熱くなってきたなぁ」




座ったベンチは熱を持っていて気温が上昇してきているのがわかる。

日陰は沢山あるものの、真夏の熱さをしのげるとは思えない。

私は繭乃から園内地図を借りて確認しはじめた。

食事や水分補給はどうにかなるとして、休める場所があるかどうか探しておかないといけえない。




「中央広場ってところに噴水があるから、そこが涼しいかも」




水が出ている場所なら周囲よりも少しは気温が低くなるはずだ。

他にもレストランやホテルなどが描かれているけれど、そこで休憩するときには30分の労働では済まされないだろう。

できるだけクレジット人間という、得体のしれない制度は使いたくない。

クレープを食べた後は噴水へ行くと決めて、私達はまたクレープ屋へ向かった。

労働時間はついさっき終わったみたいで、尋が4人分のクレープをもらっているところだった。




「俺たちここから出たいんですけど、なにか知りませんか?」


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