僕はまだ此処にいる
 それは葉が緑から赤に変わっていく季節のこと。

 放課後の僕たちしかいない教室で、君がいきなり彼氏が出来たと自慢気に紹介してきた。その彼氏というのが、昔からよく僕に因縁をつけてくる奴で、高校に入ってからは、因縁をつけてこなくなっていた。

 だから僕関係なしに、本当に君のことを好きになって付き合ったんだと思った。だが、そんな僕の考えはすぐに裏切られた。

 あいつが僕の耳元で囁いたのだ。


「これでお前はまた一人だな」と。


 僕になんの恨みがあるのかは知らないが、君は関係ない。なのに、あいつは君の気持ちを踏みにじった。それが許せなくて、思わずそいつのことを殴ってしまった。

 その時の君の顔は忘れられない。あの驚いたような表情を。そして信じられないとでも言いたげな瞳を。

 その後のことは記憶にない。気づいたら家に帰っていて、自分のベッドの上にいた。


 次の日になり、学校に行くと玄関に君がいた。
君は昨日のことがなかったかのように、いつも通りの笑顔で接してくれた。でも、僕は君とどう接したらいいのか分からなくなって、君から逃げた。

 そのまま君とは話さなくなり、君はあいつと一緒にいることが増えた。あいつが言った通り、僕は一人になった。
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