僕はまだ此処にいる
 だって、君が死んでしまう少し前まではあの綺麗な笑顔を浮かべていたのだろう?
 桜が綺麗だなって。私も桜みたいに誰かを魅了させたいんだって。散っている桜を見て思っていたんだろう?

 何も本当に君が散っていかなくてもいいじゃないか。桜と一緒に散っていかなくったって。


 僕は君に伝えたいことがたくさんあったのに。また前みたいな関係に戻ろうって。また君の笑顔を見たいって。もしよかったら、僕と付き合ってほしいって。そして、一生一緒にいようって。


 それに君のおかげで、この李桜っていう名前も好きになったんだ。君が綺麗だって言ってくれた名前が。君が好きだって言ってくれた名前が。

 なのに、なんで……。
 なんで、いなくなったんだよ。逝くなら僕も一緒に連れていってほしかった。


 その日の放課後、僕は立入禁止になっている屋上にこっそりと忍び込んだ。そして、君の元へと逝こうとした。
 だけどそんな時、君の声が聞こえてきたような気がした。


「今、こっちに来たら許さないから。私は空の彼方から貴方のこと見てるから」


 と言う君の声が。
 その途端、もう出ないと思っていた涙がまた溢れてきた。
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