御曹司の俺には興味が無いだと?〜もう1人の俺を愛する秘書補佐
「ここ、いいですか?」
「はい、どうぞ」
私の横に座った人は、昨日、本を取ってくれた人だった。
「あっ、昨日は、どうもありがとうございます」
「いえ、今日も会いましたね」
「はい」
目元は見えないけど、微笑むと爽やかさを感じ、優しく耳に響く声が心地いい。

「赤斐華さん、なんですね」
机に置いていた図書カードを見て、その人は私の名前を呼んだ。
「はい。薔薇みたいな名前ですよね。見た目と違いますが・・・」
その人は黙って、微笑んでいた。

「僕は、陸(りく)っていいます」
「陸さん・・・難しそうな本を読んでいるんですね」
手元に持っていたのは、経営学の本。
「仕事柄ね。邪魔してごめんね」
陸さんは、本を読み始めた。

テーブルに2人でいる空間は、静かに時が流れる。
誰か知ってる人が傍にいる感覚って、何か不思議な感じ。
何だか・・・心が温かい。
< 14 / 65 >

この作品をシェア

pagetop