王子の「妹」である私は弟にしか見えないと言ったのに、王女として正装した途端に求婚するなんてあんまりです〜まさか別人だと思ってる!?〜
8.恋
アーサーはダンスが上手だった。あまりダンスが得意ではないシャロンだが、アーサーが上手く呼吸を合わせてくれるので足を踏んでしまいそうになったり、可笑しなステップを踏んでしまうこともなかった。
「アーサー、ダンスがとても上手なのね。私こんな風に楽しく踊れたのは初めてだわ」
ダンスのレッスンはいつも苦痛だった。王女として、ダンスが踊れないなんて国の恥にもなると、先生から厳しく指導されていたからだ。
それが今ならもう一曲踊ってもいいと思えるほど気分は高揚していた。スーザン特製の冷えたレモネードは美味しくて、火照った体に心地良かった。
「光栄だよ。なんてね、シャロンがしっかり合わせてくれたからだよ」
僕だってダンスは得意じゃない、アーサーはそう言って笑ったが恐らく謙遜だ。
「……どうかした?」
アーサーは度々熱に浮かされたような表情で、ぼーっとしたようにシャロンを見つめている。
「ああ、すまない。あんまり美しくて見惚れてしまう」
「うれしいわ。オーウェンから"真面目過ぎる奴"だって聞いていたけれど、女性の扱いが上手いのね」
「オーウェンはそんなことを言ってたのか……確かに真面目すぎるとは言われているけど、そうでもないよ」
アーサーは困ったように否定した。
「……あ、でも誤解しないでくれ。誰にでもこんなことを言うわけじゃない。貴方は本当に特別なんだ」
あまりに真剣な瞳に、シャロンは思わずドキッとしてしまった。
「まだ会ったばかりよ、アーサー。お互いのことをまだ知らないわ」
「それならこれから知っていけばいい」
アーサーは訴えるような視線でシャロンを見つめている。こんなに真摯に向き合われてしまうと、拒むこともできない。
「ええ、そうね」
そう言って笑うと、アーサーもほっと安堵したような表情になる。
「そうだな……、僕もオーウェンから聞いたよ。シャロンは馬に乗ったり、外で遊ぶことの方が好きな子だったの?」
「オーウェンってば、余計なことばかり話すのね。ええ、そうよ」
しばらく会っていなかったということもあるが、彼の中でシャロンは永遠に"お転婆娘"なのだろう。
「どうして余計なことなんだい?」
オーウェンは不思議そうに首を傾げた。
「だって……男性はそういった女性を好まないでしょう」
「そんなことはない。少なくとも僕は、その話を聞いてますます貴女に会いたくなった! ……失礼、少し力が入り過ぎてしまった」
「いいの、そう言ってもらえて安心したわ」
「今でもこっそりお兄さんの馬に乗っていると言うのは本当かい? 」
「ええ、そうよ。秘密にしてね」
そう言うと、アーサーは声を上げて笑った。
「ああ、もちろん」
「……貴方はどんな子だったの?」
アーサーはしばらく考え込むような素振りを見せて、ふっと笑った。
「昔から本を読むことが好きだった。僕は外に出ていくより、屋敷に籠もって本を読んでる方が楽しかったからね。オーウェンが遊びの誘いに来ても、出掛ける直前まで本を読んでいたから、勉強好きの真面目な奴だと思ったらしい」
「それで"真面目すぎる奴"ね、オーウェンらしいわ」
「そんな男、女性は嫌だろう。暗いし、なんだか頼りない」
「いいえ、知識は武器になるわ。それに暗いだなんて思わない、貴方はとても魅力的な人よ」
シャロンは力を込めて言った。
「そう言ってくれるのはシャロンだけだよ。君は強くて、優しくて、美しい、完璧な女性だ」
「……それは買い被り過ぎですわ」
「物語の登場人物というのはいつも輝いて見える。それはどんなときでも、しっかり"自分"というものを持っているからさ。君もそうだ、輝いている女性は美しい」
アーサーは恭しくシャロンの手を取った。
「シャロン……貴方さえ良ければ、今度デートに誘いたい」
「アーサー、ダンスがとても上手なのね。私こんな風に楽しく踊れたのは初めてだわ」
ダンスのレッスンはいつも苦痛だった。王女として、ダンスが踊れないなんて国の恥にもなると、先生から厳しく指導されていたからだ。
それが今ならもう一曲踊ってもいいと思えるほど気分は高揚していた。スーザン特製の冷えたレモネードは美味しくて、火照った体に心地良かった。
「光栄だよ。なんてね、シャロンがしっかり合わせてくれたからだよ」
僕だってダンスは得意じゃない、アーサーはそう言って笑ったが恐らく謙遜だ。
「……どうかした?」
アーサーは度々熱に浮かされたような表情で、ぼーっとしたようにシャロンを見つめている。
「ああ、すまない。あんまり美しくて見惚れてしまう」
「うれしいわ。オーウェンから"真面目過ぎる奴"だって聞いていたけれど、女性の扱いが上手いのね」
「オーウェンはそんなことを言ってたのか……確かに真面目すぎるとは言われているけど、そうでもないよ」
アーサーは困ったように否定した。
「……あ、でも誤解しないでくれ。誰にでもこんなことを言うわけじゃない。貴方は本当に特別なんだ」
あまりに真剣な瞳に、シャロンは思わずドキッとしてしまった。
「まだ会ったばかりよ、アーサー。お互いのことをまだ知らないわ」
「それならこれから知っていけばいい」
アーサーは訴えるような視線でシャロンを見つめている。こんなに真摯に向き合われてしまうと、拒むこともできない。
「ええ、そうね」
そう言って笑うと、アーサーもほっと安堵したような表情になる。
「そうだな……、僕もオーウェンから聞いたよ。シャロンは馬に乗ったり、外で遊ぶことの方が好きな子だったの?」
「オーウェンってば、余計なことばかり話すのね。ええ、そうよ」
しばらく会っていなかったということもあるが、彼の中でシャロンは永遠に"お転婆娘"なのだろう。
「どうして余計なことなんだい?」
オーウェンは不思議そうに首を傾げた。
「だって……男性はそういった女性を好まないでしょう」
「そんなことはない。少なくとも僕は、その話を聞いてますます貴女に会いたくなった! ……失礼、少し力が入り過ぎてしまった」
「いいの、そう言ってもらえて安心したわ」
「今でもこっそりお兄さんの馬に乗っていると言うのは本当かい? 」
「ええ、そうよ。秘密にしてね」
そう言うと、アーサーは声を上げて笑った。
「ああ、もちろん」
「……貴方はどんな子だったの?」
アーサーはしばらく考え込むような素振りを見せて、ふっと笑った。
「昔から本を読むことが好きだった。僕は外に出ていくより、屋敷に籠もって本を読んでる方が楽しかったからね。オーウェンが遊びの誘いに来ても、出掛ける直前まで本を読んでいたから、勉強好きの真面目な奴だと思ったらしい」
「それで"真面目すぎる奴"ね、オーウェンらしいわ」
「そんな男、女性は嫌だろう。暗いし、なんだか頼りない」
「いいえ、知識は武器になるわ。それに暗いだなんて思わない、貴方はとても魅力的な人よ」
シャロンは力を込めて言った。
「そう言ってくれるのはシャロンだけだよ。君は強くて、優しくて、美しい、完璧な女性だ」
「……それは買い被り過ぎですわ」
「物語の登場人物というのはいつも輝いて見える。それはどんなときでも、しっかり"自分"というものを持っているからさ。君もそうだ、輝いている女性は美しい」
アーサーは恭しくシャロンの手を取った。
「シャロン……貴方さえ良ければ、今度デートに誘いたい」