不遇な財閥御曹司は、政略妻に一途な愛を捧げたい。
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ゆっくり支度した私は、余裕を持って車に乗って料理教室に向かった。料理教室は五十階ほどある商業ビルの十階に入っている。
「おはようございます」
「おはようございます、伊能さん。今日は、Aー2教室ですので右奥を行ってください」
「ありがとうございます」
受付で名前をいえばネーム掛けと今日の教室の資料を渡されて言われた教室に向かった。
「……あ、藍南ちゃん。今日は一緒のクラスだね、一緒のグループだし楽しみだね」
教室に入り声をかけてくださったのは白崎夏帆さん。私よりも二つ上でお姉さんのような人だ。
元々料理は得意らしいけど、婚約者様がいてその人のためにもっと料理を上達させたくて通っていると聞いた。本当にすごい人だ。
「はい、私も嬉しいです。よろしくお願いします、白崎さん」
「うん、よろしく」
私はエプロンをすると、ホワイトボードに書かれている下準備に白崎さんと取り掛かる。
まず、ご飯の準備だ。お米はもう研いであり浸水を済ませた状態だたのでザルにあげて水気を切る。
ホワイトボードを見ながら、昆布を濡れ布巾で汚れを取ってから二・三か所にキッチンバサミで切り込みを入れてお釜の中にお米と分量分の水と酒に昆布を入れて炊飯器をスイッチを押す。
すると教室が始まる時間になり講師の方が話し始めた。