不遇な財閥御曹司は、政略妻に一途な愛を捧げたい。



『……もしもし、藍南ちゃん?』

「はい、藍南です。あの、話があって」

『ん? どうした? 体調、やっぱり悪いのか?』


 電話越しの彼の優しい声に、なんだか泣きそうになる。妊娠すると情緒不安定になるって聞いたけどこれのことかな。


『藍南ちゃん? 本当に大丈夫か?』

「すみません、少し考えごとを……あの、永眞さん。今、病院に行ってきました。それで」

『何か、悪いところでもあったのか!?』

「違いますよ。私が行ったのは産婦人科です……赤ちゃんがいました」

『え、あか……』

「私と永眞さんの赤ちゃんがお腹にいて、早く言いたくて電話しました」


 私がそう言うと今度は永眞さんが黙ってしまった。それが不安になって「永眞さん?」と名前を呼ぶ。


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